ミャンマー・パガン遺跡 登録延期された“生きる”聖地

★ミャンマーの仏教遺跡群パガン

2012.12.28


大規模なパガンの仏教遺跡群【拡大】

 前回、世界3大仏教遺跡であるカンボジアのアンコールワットをご紹介しましたが、残るインドネシアのボロブドゥール遺跡は世界遺産に登録されているにもかかわらず、ミャンマーのパガン遺跡は登録が延期された状態です。

 ミャンマーは「ビルマの竪琴」で知られる敬虔(けいけん)な仏教徒の国で、パガンはそのミャンマー中部、イワラジ川沿いの約40平方キロメートルの平原に広がる仏教聖地です。大小さまざまなパゴダ(仏塔)や寺院が林立しており、規模から言えば世界ナンバーワンの仏教遺跡で、特に夕陽に浮かぶ光景は筆舌に尽くしがたい美しさです。

 しかし、遺跡の管理や修復方法に問題があり、また、時の軍事政権が、世界遺産の登録は、海外から観光客を呼び込む一方で国際社会の干渉を受けることから敬遠し、隠れた世界遺産となっています。

 しかし、2011年に軍事政権から民政移管。民主化運動の指導者アウン・サン・スーチーさんが議員として活動を始めるなど、これまで国際社会からの干渉を敬遠してきた姿勢に変化が見られます。このパガンの仏教遺跡が世界遺産に登録されるかどうかが改めて注目されるようになりました。

 パガンは11世紀から13世紀にかけて栄えたパガン王朝の都であり、黄金の仏像やレンガ造りの仏塔などは往時の栄華を伝えています。大きさも形も異なるこれらのパゴダの多くは、王侯貴族など特権階級が寄進して建立したものです。寄進することで徳を積み、輪廻(りんね)転生を願い、極楽への道を歩んでいることを示そうとしたのです。

 しかし、徳は一代限りなので、後の世代の人たちは新たに仏塔を追加したり、手を加えたりして、今日でもパゴダへお参りする信者の姿が絶えません。

 すなわち、仏教の信仰で徳を積むという考え方は、ミャンマー国民の生活の中に深く根付いており、パガン遺跡に手を加えて修復することもその延長線なのでしょう。

 このパガン遺跡が世界遺産に登録されるかどうかは、「オーセンティシティ(真実性)」すなわち、遺跡に手が加えられていないかの是非が問われますので、パガン遺跡は幻の世界遺産になるかもしれません。

 しかし、パガンが歴史的にも貴重な仏教遺跡であると同時に、いまなお地域の人たちにとって神聖な信仰の場である以上、真に「生きている世界遺産」として認識すべきかと思います。

 ■黒田尚嗣(くろだ・なおつぐ) 慶應義塾大学経済学部卒。現在、クラブツーリズム(株)テーマ旅行部顧問として旅の文化カレッジ「世界遺産講座」を担当し、旅について熱く語る。

 

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