最近はパワースポットが人気を呼んでいるようですが、先日訪れた沖縄の斎場御嶽(せーふぁーうたき)こそは写真にも目に見えないエネルギーが写っており、真の聖域かと思われます。
沖縄にはこの斎場御嶽を含めて9つの文化遺産が「琉球王国のグスクおよび関連遺跡群」として世界遺産登録されていますが、これらは琉球王国独自の文化を象徴する遺跡群です。すなわち独特のグスク(城)の景観やすぐれた庭園、そして精神文化を伝える御嶽や陵墓が人類共有の文化遺産として認められたのです。
御嶽は琉球の信仰における祭祀(さいし)などを行う施設で「拝み山」とも呼ばれています。また斎場は「最高位」を意味することから斎場御嶽は「最高の御嶽」の意味です。琉球開闢の神アマミキヨがつくった7つの御嶽の一つとされ、琉球王国最高の聖域として位置づけられています。
巨大な2枚の岩の空間にはパワーが満ちあふれ、その奥の三庫裏(さんぐーい)には「京のはな」という最も格式の高い拝所があり、神の島とされる久高島が遥拝できます。まさに大地の「気」を感じることのできる聖域です。
ここは古くは男子禁制で、琉球王国の神女組織の最高位・聞得大君(きこえのおおきみ)が就任する「お新下り(おあらおり)」の儀式が行われる場として重要な役割を果たしてきました。琉球王国では神の声を聞くことのできるのは女性であり、それも王の親族の女性と決まっていました。その女性が琉球王国最高神官、聞得大君だったのです。
久高島へは斎場御嶽の近くにある安座真港より高速船に乗っていくことができます。久高島は沖縄本島南部の東に浮かぶ長さ4キロ弱の細長い島で、沖縄本島が「癒しの島」と呼ばれるのに対し、久高島は「神の島」とされ、琉球開闢の祖神が降り立った所であり、島のあちこちに聖域があります。そしてこの島の浜辺の聖なる白砂が御嶽に敷き詰められたといわれています。
この久高島の白砂と植物、そして空の色はとても美しく、心を和ませてくれますが、特に聖域の「生誕の穴」と呼ばれる岩場の穴は、今までの人生、意識、観念を無くして通ると生まれ変わった気持ちになるのでお薦めです。
そしてわれわれは自然からさまざまな恩恵を授かっていることを理解し、「すべてに有難う」という感謝の念も生まれます。
■黒田尚嗣(くろだ・なおつぐ)慶應義塾大学経済学部卒。現在、クラブツーリズム(株)テーマ旅行部顧問として旅の文化カレッジ「世界遺産講座」を担当し、旅について熱く語る。