憧れの大人が集い育てたレストラン「キャンティ」

2013.07.11


キャンティ飯倉本店【拡大】

 1960(昭和35)年4月6日、キャンティは川添浩史・梶子夫妻の「ヨーロッパのサロン風の店を持ちたい」、しかも「本格的なイタリア料理の店を」という梶子さんの希望で誕生した。

 浩史さんの祖父は元土佐藩士で明治の元勲・後藤象二郎であり、貴族院議員の父猛太郎は日活の創立者でもあった。

 浩史さんは幼くして親戚筋の川添家の養子になり、35(昭和10)年、遊学中に訪れた南仏カンヌで生涯の友となる写真家のロバート・キャパを知る。

 一方、梶子さんは戦後間もなく、彫刻を勉強するためにローマにわたり、エミリオ・グレコの弟子となっていた。誰もが海外渡航できる時代ではなかった頃である。

 90(平成2)年4月15日、『キャンティの30年』という非売品の本が刊行された。「キャンティは、子供の心を持つ大人たちと、大人の心を持つ子供たちのためにつくられた場所」という浩史さんの思いをそのまま巻頭言にした。

 三島由紀夫、松本清張、遠藤周作、黛敏郎、團伊玖磨、岡本太郎、黒澤明、菊田一夫、勅使河原宏…という大人たちに交じって、福澤幸雄、かまやつひろし、安井かずみ、加賀まりこらが毎日のようにキャンティに集まっていた。

 「六本木族」という言葉が生まれ、田辺昭知、堺正章、加橋かつみ、萩原健一らのグループ・サウンズがブームとなった。

 彼らは皆、バジリコのスパゲッティやオーソブッコ、ミラノ風カツレツを食しながら、大人たちとの背伸びした会話を楽しんだ若き客たちであった。

 大原麗子は「キャンティは年若い私に初めて紳士淑女の世界を垣間見させてくれた」と書き記す。

 皇族、政財界人、外国からはイブ・モンタン、ナット・キング・コール、ボディーガードを従えたフランク・シナトラ、イブ・サンローラン…。この本は、そんなきらめく場所をつくり上げた浩史・梶子夫妻への限りないオマージュであった。

 今キャンティは、浩史さんの孫の隆太郎さん(42)が3代目として「100年続いてこそ本当のレストラン」と言い続けた浩史さんと梶子さんの志を受け継ぐ。子供たちが、あんな大人になりたいと憧れた時代を取り戻したい、と。(谷口和巳)

 ◆キャンティ飯倉本店 東京都港区麻布台3の1の7 (電)03・3583・7546

 ■谷口和巳(たにぐち・かずみ) 団塊世代の編集者。4つの出版社を転籍、19の雑誌に携わり、編集長として4誌を創刊。団塊世代向け月刊誌『ゴーギャン』元編集長。『女優森光子 大正・昭和・平成−八十八年激動の軌跡−』『帝国ホテルの流儀』(共に集英社)などの書籍も手掛ける。

 

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