年末年始の宴会続きで下痢や便秘など便通が悪くなると、トイレで息張る回数が増え、痔(じ)を起こしやすい。特に寒い冬はイボ痔にとって大敵。尻が冷えると、肛門周辺の細い血管が鬱血して症状が悪化しやすい。この時期はお尻の調子に注意しておこう。
【血管の塊がポッコリ】
痔は、「痔核(じかく)」「裂肛」「痔瘻(ろう)」に大別されるが、発症が最も多い(50%以上)のが、別称・イボ痔こと痔核だ。
痔に詳しい東肛門科胃腸科クリニック(東京・恵比寿)の東光邦院長が説明する。
「肛門には細い静脈が集まった毛糸玉のようなクッション部分があり、その部分が鬱血してポッコリ膨らんだのが痔核です。肛門の境から直腸側にできるのが内痔核、外側にできるのを外痔核と呼びます」
排便時や重い物を持ったり、とにかく強く長く息むのが原因になる。長時間、同じ姿勢で座る、立ち続けるのも、尻が鬱血するので要注意だ。
【無痛の出血と脱出】
内痔核と外痔核では症状が異なる。外痔核は外側から手で触れる血豆のような硬いシコリができ、激しく痛むのですぐ分かる。潰れなければ出血は起こらない。
「内痔核は痛みを感じない直腸側の粘膜にできるので痛みは出ません。典型的な症状は排便時に痔核が擦れて起こる鮮血出血です。最初は紙に付く程度で始まり、痔核が大きくなってくると血が便器にポタポタ落ちたり、勢いよくほとばしるようになります」
さらに内痔核は進行とともに痔核が外に飛び出してくるのが特徴。脱出の程度によりI−IV度に分類される(別項)。
「一般に痔の出血は鮮血で、便に混じってねっとり付いているのは消化管からの出血です。しかし、大腸がんの疑いもあるので、出血があれば必ず受診してください」
【トイレは3分以内】
痛みの強い外痔核は早い段階であれば外用薬と生活改善で治し、大きいものは手術で除去する場合もある。むしろ放置して悪化しやすいのは痛みのない内痔核。診察では、視診(見る)や指診(指を入れる)、肛門鏡などを行う。
「I度は坐薬や軟膏(なんこう)で治るが、II度ぐらいから注射療法の適応になり、IV度は痔核を切除する手術がメーンになります。どれも当院では日帰り治療です」
注射療法とは、痔核に硬化剤を注射して硬化・縮小させる方法。5分ほどで終了するという。
「生活改善は第一に排便の改善。トイレは行きたいときに行き、長くても3分以内に済ませる。下痢や便秘にならない食生活。お風呂はシャワーでなく、湯船に浸かり、下半身を十分温めることが大切になります」
【内痔核の脱出による分類】
I度:痔核が常に肛門内にあり排便時も脱出しない
II度:排便時に脱出するが、排便後は自然に戻る
III度:排便時に脱出し指で押し込まないと戻らない
IV度:痔核が常に脱出した状態で、指で押し込んでも戻らない