東京都の猪瀬直樹前知事(67)が医療法人徳洲会グループから現金5000万円を受け取っていた問題で、東京地検特捜部が猪瀬氏を任意で事情聴取していたことが23日、分かった。同日告示された都知事選との兼ね合いもあり、捜査が本格化するのは選挙後との見方が一般的だが、「逮捕もあり得る」(特捜OB)。特捜部の動きが注目される。
猪瀬氏をめぐっては、市民団体が公職選挙法違反(明細書の不提出、虚偽記載)罪などで告発状を提出し、特捜部が今月7日に受理。猪瀬氏の個人事務所の会計責任者や5000万円を手渡したという徳田毅衆院議員(42)を聴取するなど、捜査を進めていた。
都知事選告示と前後して行われた猪瀬氏への聴取。今後の捜査はどうなるのか。
「今回の聴取は、いわゆる小当たり。どういう弁明をするのかを見極めて、証拠と突き合わせ、どこまでそれを覆せるかを分析する。都知事選への影響を嫌うので捜査が大展開するのは選挙後になるだろう」。元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士はこう解説する。
「5000万円は個人的な借り入れ。手を付けずに返済した」と繰り返してきた猪瀬氏だが、当選後に徳洲会側との面会を仲介した民族派団体「一水会」の木村三浩代表(57)に500万円を渡していたことが発覚。特捜部は木村氏への任意聴取も実施した。
若狭氏は「猪瀬氏が『選挙資金ではない』という従来の主張を維持するならば、逮捕もあり得る」と断言。理由として「生活の党の小沢一郎代表が陸山会事件で問われた政治資金規正法は会計責任者との共謀を立証することが必要だったが、公選法は、政治家の責任をダイレクトに問える。捜査する側にとってもやりやすい」と指摘する。
猪瀬氏については東京電力病院をめぐる贈収賄疑惑も浮上。「証拠が固い公選法で入ると、収賄罪の取り調べもやりやすい。猪瀬氏の供述が変わらなければ、公選法で逮捕し、その後、収賄に発展していく」(若狭氏)
世間の注目が都知事選に集まる中、猪瀬氏に捜査の包囲網がじわじわと迫っていく。