どこの国でもいえることですが、その国の言葉を知ることは、現地の人と仲良くなる一番の近道です。特にトルコでは挨拶の言葉だけでも覚えておくと旅行が楽しくなること請け合いです。
トルコ語は発音がローマ字読みをすればよく、語順も日本語と同じで文法も似ていることから日本人が覚えやすい言語の一つです。
トルコ人は親日的で、間違いにも寛容なので例えば「メルハバ」と挨拶の言葉をかけるだけで、仮に発音やアクセントが違っていても笑顔で話しかけてきます。そもそも日本人はトルコでは絶大な人気があるのです。私自身、トルコに行くと癒やされるだけでなく、元気を取り戻すことができます。
その理由として宿敵ロシアを破ったとか、初代大統領のアタチュルクが日本びいきであったといわれ、日本とトルコは中央アジアの同じ民族を祖先に持つと信じられています。
今回は「ヨーロッパとアジアの架け橋」と呼ばれるビザンツ、オスマントルコ帝国の都として繁栄したイスタンブールの世界遺産を紹介します。
この街はボスポラス海峡によってヨーロッパ側とアジア側に分かれており、ヨーロッパ側は金角湾を隔ててさらに旧市街と新市街に分けられます。そして世界遺産「イスタンブール歴史地区」の登録物件は、ほとんどが旧市街に集中しています。
お薦めはオスマン帝国時代の君主(スルタン)が暮らしたトプカプ宮殿で、宝物館、謁見の間、有名なハレムなど当時の華麗な生活をしのぶことができます。ここは三方を海に囲まれた丘の上に建っているので、眺めも最高です。
トプカプ宮殿の南にあるアヤソフィアとスルタンアフメット・ジャミィ、通称ブルーモスクも必見です。アヤソフィアはビザンツ帝国の中心でローマ・カトリックと並ぶ正教会の核でしたが、1453年、メフメット2世がこの地を征服した際、キリスト教の大聖堂からイスラム教のモスクへと変貌しました。
330年、ローマ帝国のコンスタンティヌス大帝がこの地を都に定めて以来、シルクロードの終着地として東西文化の交流拠点となりました。
さらにはキリスト教とイスラム教が融合したという歴史的経緯から、私はイスタンブールが「アジアとヨーロッパの地理的な架け橋」というだけでなく、「政治文化や宗教を超えた民族の架け橋」になってほしいと思っています。
■黒田尚嗣(くろだ・なおつぐ) 慶應義塾大学経済学部卒。現在、クラブツーリズム(株)テーマ旅行部顧問として旅の文化カレッジ「世界遺産講座」を担当し、旅について熱く語る。