5日開幕した中国の全国人民代表大会(全人代)では、経済成長率7・5%の目標や国防費2ケタ増、人民元の変動幅拡大などが打ち出された。
全人代は、中国の今後1年間の重要政策について話し合う場で、例年3月上旬から中旬にかけて北京の人民大会堂に全国の省や軍などの代表約3000人が出席する。形式的には日本の国会と似ているが、中国は共産党の一党独裁であり、政党間の政権交代はなく、重要事項は共産党の指導部が決定する。全人代は党の決定を確認するだけとも指摘されている。
全人代で掲げられた成長率目標7・5%は、消費者物価指数(CPI)の伸び率3・5%とともに、前年と同じである。これは、そろそろ中国経済が頭打ちになってきていることを示している。
また、中国経済が「ルイス転換点」にぶつかってしまったという識者の指摘とも合致している。
ノーベル賞経済学者アーサー・ルイス氏によると、経済発展の初期の段階にある国々は小さな「近代的セクター」と、大規模な農民を持つ大きな「伝統的セクター」からなっていて、この農民という「余剰労働力」が近代的セクターに移行し、経済発展する。
ところが、農民の余剰がなくなった。ここまでくると、人口要因によって経済成長の限界を迎える。それを突き破るには、経済構造の変革など「余剰労働力」とは別の要素が必要で、それがないと経済が停滞するというわけだ。
中国経済の現在の課題といえば、30兆元(約500兆円)以上とみられる「影の銀行(シャドーバンキング)」問題だ。経済が停滞するとこれが一気に顕在化する恐れがある。しかも、経済が停滞していては、なかなか処理することが難しい。
先進国であれば変動相場制を導入していることもあり、金融緩和が経済成長の大きな手段となっている。実際、米国もリーマン・ショック後に大規模の金融緩和を行い、大恐慌に陥らずに済んだ。