ところが、中国は変動相場制ではない。人民元の変動幅を拡大するというものの、裏を返せば、固定相場制を維持するということだ。
習近平国家主席は太子党(共産党幹部の子弟)出身で、沿海部の福建省や浙江省の党要職を務め頭角を現してきた。その地域は中国の大手輸出企業が集まっており、人民元は安くしておくことが既得権を守ることになる。そのため、変動相場制への移行は政権のアキレス腱(けん)となる。
そうした国内の矛盾から目をそらすために、対日批判を使っているフシがある。そして、それが国防費2ケタ増につながっている。
先日のコラムでも紹介したが、中国の国防費は国内総生産(GDP)の2%と、日本の倍である。その国防費を中国はさらに伸ばして、アジア地域の軍事バランスを歪めている。
中国のシャドーバンキング問題は世界経済の弾薬庫であり、大波乱要因になる。その来たるべき日に備えて、日本も今のうちから経済力を強化する必要がある。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)