グラナダ「アルハンブラ宮殿」 アラベスク模様中心としたイスラム建築の集大成

★グラナダ「アルハンブラ宮殿」

2014.05.23


イスラム芸術の粋を集めたアルハンブラ宮殿【拡大】

 今日の世界遺産の中には映画や旅行記で紹介されて有名になったものが数多く存在します。その中でも1832年、アメリカ人作家のワシントン・アーヴィングが発表した「アルハンブラ物語」は、それまでさほど知られていなかったスペイン・グラナダのアルハンブラ宮殿を広く世界に知らしめた著作として有名です。

 これは彼がアルハンブラ宮殿に滞在した経験とそこにまつわる伝説や歴史をつづった紀行文です。読めば一度は行ってみたいと思わずにはいられない名著です。なかでも「毎日仕事などせずにぶらぶらしている貧困家庭の人たちが、祝祭日になると精いっぱいの晴れ着を着て街に繰り出す」というエピソードなどは、今日のアンダルシア人の性格をも伝えており、興味深い内容です。

 現在では「アルハンブラ宮殿」に加えて王族の夏の離宮「ヘネラリーフェ」およびグラナダ最古の居住地「アルバイシン」が世界文化遺産として登録されています。今回はイスラム芸術の粋を集めた最高傑作とされるアルハンブラ宮殿を紹介します。

 宮殿は8世紀から約800年続いたイスラム教徒の王族たちの栄華を今に伝えています。キリスト教徒による国土回復(レコンキスタ)後の16世紀、スペイン王でもあった神聖ローマ皇帝カール5世は、この宮殿にルネッサンス様式の宮殿やサンタ・マリア教会を作らせたため、イスラム教とキリスト教の融合した建築物とも言えます。

 しかし、全体的には空間を自然と調和させ、偶像崇拝禁止というイスラムの教理に従い、壁や天井のモチーフには人物や動物はいっさい使わず、幾何学文様やアラビア文字を装飾した繊細緻密なアラベスク模様が中心の華麗なイスラム建築です。特に「アッラーだけが勝者」というコーランの一節が繰り返し使われているのも特徴的です。

 宮殿内には多くの見所がありますが、ハイライトはやはり「ライオンの泉」と呼ばれる12頭のライオンに支えられたイスラム建築には珍しい噴水です。イスラム教徒にとって水は大変貴重で、その貴重な水を宮殿に引いて噴水を設けることは最高のぜいたくでした。

 コーランには「天国は清らかな小川がさらさらと流れている所」と書かれていますが、童謡「春の小川」の歌詞が生まれた頃の日本は、イスラム教徒にとっては天国そのものだったのかもしれません。

 ■黒田尚嗣(くろだ・なおつぐ) 慶應義塾大学経済学部卒。現在、クラブツーリズム(株)テーマ旅行部顧問として旅の文化カレッジ「世界遺産講座」を担当し、旅について熱く語る。

 

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