大江健三郎氏も登場 祝!「九条の会」10周年講演会 ”神学論”の奥にのぞく底力 (2/4ページ)

2014.06.23


 原稿を片手に演説する大江健三郎氏 =6月10日、渋谷公会堂【拡大】

■レッドカード発言

 続いて登壇したのは翻訳家の池田香代子氏。「世界がもし100人の村だったら」をまとめた著者としても知られ、今年初めの都知事選では宇都宮健児氏の応援に駆けつけ、細川護煕元首相を破って2位となった宇都宮氏の善戦に貢献している。それだけになかなか弁が立つ。

 池田氏いわく「(日本国)憲法をつくったのは誰か。GHQがかんでいるそうですね。そのGHQが叩き台に使ったのは皆さんご存じのように、鈴木安蔵らの憲法研究会による憲法草案だった。鈴木安蔵がその際に参考にしたのが、植木枝盛が書いた明治時代の私擬憲法だった。さらにそれが国会にかけられて、いろんな政治家のアイデアが盛り込まれて今の憲法になっている。何よりも忘れてはならないのは、歴史がこの憲法の生みの親であるということなんです(拍手)」。

 ずいぶんと鈴木安蔵や植木枝盛、憲法案を議論した帝国議会の審議を過大評価しているような気がしてならない。帝国議会での議論は両院あわせてたったの3カ月半、単純計算しても1条あたり1日のハイペースで審議されたわけだ。また日本国憲法の人権条項、特に家族条項の原案を作成したことで知られるベアテ・シロタ・ゴードン女史(『1945年のクリスマス 日本国憲法に「男女平等」を書いた女性の自伝』などの著書がある)が平成24年末に亡くなったときには九条の会でも大々的に取り上げられていたが、女史に限らずGHQの面々が日本国憲法の制定に決定的な役割を果たしていたことはもはや常識のはず。その点がずいぶん軽視されているなあ、というのが率直な感想だ。

 そして池田氏は96条改正論に言及した。「『日本の憲法は変えにくいのでずっと改正されずに世界で一番古い憲法になってしまっていて、民意を反映しにくくなっている。他の国をみてごらんなさい。民意を反映してこんなに変えています』って(改憲派は)言うんですね。『あらそうかしら』と一瞬、思ってしまいそうですが、そんなことないんですよね。だいたい世界の国の8割くらいが、いろいろ細かいところは違うので一概にはいえませんが、日本と同じ3分の2の(国会議員の)賛成で国民投票にかけられるとか、そういうふうになっています。数カ国、もっと厳しい、4分の3とかいうところもある。数カ国、もっと緩い、2分の1といったところがある。大半はもう日本と同じなんですね」。ずいぶんサバを読んだアジ演説という気がしてくる。そもそも憲法改正のために国民投票が必要な国というのは少数派である。西修・駒沢大名誉教授によれば「先進国から成る経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国の憲法改正条項を調べてみると、日本国憲法のように憲法改正を必ず国民投票に付さなければならないという規定を持つ国は、日本以外にわずか5カ国しかない」のが現実だ。日本国憲法の改正要件が世界標準かといえば、とうていそんなことはない。これは断言していい。

 池田氏の話には続きがある。「憲法の変え方(改正条項)を変えた国があるかなあ、と思うと、あるんです。でもそれは、すべて変えやすい方から変えにくい方へ変えているんです。だから日本が憲法を変えやすく変えたら、これは世界初の快挙です(会場ざわめく)。やります? もう本当に流されないようにしないと、とんでもないことになってしまいます」。言い切った! これはレッドカード(一発退場)発言だといえる。うそを言うことはなりませぬ(「什の掟」)。会場には憲法研究者が何人もいたのだから、誰か後で訂正すればよかったのだが、それもなかった。しかし会場がざわめいたということは、誤りに気づいた人もある程度いたのだろうか。

 この事実誤認を正すために、少しお隣の新聞社の力を借りることにする。読売新聞政治部著『基礎からわかる憲法改正論争』(中公新書ラクレ)にはこうある。「たとえば、デンマークは1953年の憲法改正で、国民投票の可決ラインを有権者総数の45%超から40%超に引き下げた。インドネシアでも2002年、国民協議会における憲法改正の可決ラインを『出席議員の3分の2』から『定数の過半数』に改めた」。アジ演説の罪は重い。

 

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