スコットランドのイギリスからの独立賛否を問う住民投票は、開票の結果、反対が賛成を上回り、イギリスが分裂する事態は回避されました。イギリスは正式国名を「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」と言い、スコットランドは4つある連合国の一つで、かつてはスコットランドとイングランドは激しく争っていました。
そんなスコットランド王国の都エディンバラは、現在、中世の趣を残す旧市街と新しく構築された新市街によって成り立っています。1707年にイングランドと統合したことから平和が訪れ、人口が増加したために人工湖を埋め立てて新市街が生まれたのです。
エディンバラの旧市街は、今もなお中世ヨーロッパ要塞都市の景観を保っています。一方、新市街は、18世紀以降に発展した新古典主義の様式で、その区画整理された街並みは非常に美しく、その後のヨーロッパの都市計画に影響を与え、「計画都市の最高傑作」とされています。
旧市街は坂の多い街なので、新市街は湖の一部を埋めて平らな土地を造成し、道路の幅を広くして、馬車が通行しやすいように考えられています。
エディンバラはこれら新旧2つの顔をもっており、2つの特徴ある景観が調和して美しく、貴重であることから「エディンバラの旧市街と新市街」が世界遺産に登録されたのです。
主な歴史的建造物には、エディンバラ城、聖マーガレット教会、セント・ジャイルズ大聖堂、ホリールード宮殿、スコットランド国立美術館、エディンバラ大学などがあります。
その中でも、エディンバラの代表的なランドマークはエディンバラ城ですが、これは断崖絶壁の上に建つ要塞で、お城としては王族が住むには不自由でした。そこで15世紀末に、王族は修道院を改築したホリールード宮殿に移り住んだのです。
そのため、エディンバラ城からホリールード宮殿を結ぶ道は、「ロイヤル・マイル」と呼ばれ、スコットランド有数の歴史地区となっています。
なお、エディンバラでは、毎年8月に「エディンバラ国際フェスティバル」が催され、オペラや演劇、クラシックコンサートなどの分野で世界一流の芸術家が公演を行います。
この時期に訪れると世界遺産「エディンバラの旧市街と新市街」と「一流の芸術」の両方を堪能できます。選挙後のこの機会にスコッチを飲みながら、バグパイプ演奏に耳を傾け、スコットランド特有の文化を見直してみてはいかがでしょうか。
■黒田尚嗣(くろだ・なおつぐ) 慶應義塾大学経済学部卒。現在、クラブツーリズム(株)テーマ旅行部顧問として旅の文化カレッジ「世界遺産講座」を担当し、旅について熱く語る。