高齢化が進み、うなぎのぼりに増える「認知症高齢者」。厚生労働省研究班の推計では、高齢者(65歳以上)の認知症は10年後に最大で730万人となり、「5人に1人の時代」に突入するという。高齢者の交通事故を減らすため、ドライバーの認知機能を厳格に審査する法律改正も進む。忙しく働くサラリーマンにとって、もはや人ごとではない認知症の恐れ。どのような対策が有効なのか。
厚労省が1月7日に発表した数字は衝撃的だった。
同省研究班の推計で、団塊の世代が全員75歳以上になる2025年に、認知症の高齢者は675万人となり、認知症発症に影響を与える糖尿病の有病率が増えた場合は730万人に上るという。65歳以上の5人に1人が認知症になる計算だ。
現在、予備軍とされる「軽度認知障害」(MCI)は約400万人いるとされ、MCIも今後増加することを考えれば、認知症は「国民病」といっても過言ではない。
日々の対策で防ぐことは可能なのか。
精神科医で、東京都健康長寿医療センター研究所の粟田主一(しゅいち)研究部長は、「残念ながら、発症のリスクを下げて発症年齢を先延ばしにすることはできるが、発症自体を防ぐことはできないのが現状。年齢の要因が大きく、75歳で発症しなくても80歳、85歳と年齢を重ねれば発症する可能性は高まる。しかし、発症のリスクを下げることは重要」と話す。
認知症の原因となる病気には、アルツハイマー病や脳血管障害などがある。これらは糖尿病、高血圧症、脂質異常症、心疾患などの生活習慣病によって、発症のリスクが高まることが判明している。まずは、生活習慣病の予防をしっかり行うことが、最大の“認知症対策”という。
「アルコールの飲み過ぎ、喫煙、運動不足、偏った食事などの悪習慣の積み重ねが生活習慣病につながり、認知症のリスクも高める」(粟田氏)
さらに、精神的な状態も重要な要素だ。