吉田松陰のヒーロー化されてきた歴史を見直し“実像”を描き出す 津本陽さん (2/3ページ)

2015.04.05

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津本陽さん【拡大】

 ──歴史家・奈良本辰也さんは、松陰のお母さんが真宗の妙好人(篤信者)であったと指摘されている 「母親はいつも松陰をかばうという態勢を表していた人。慈母ですよね。松陰を讃える人たちは、周囲から仏教的要素を排する傾向があるが、母親の存在が松陰の人格が破壊されなかった大きな理由かもしれない。それにしても母親だけでなく、松陰を含め杉家の人たちは皆優しい」

 ──松陰には成長しきれてない一面があります

 「兵学師範でありながら、人間というものをよく理解できていないことは確か。例えば安政の大獄で取り調べを受けるわけだが、松陰自身が何も言わなければ、悪くても遠島ですんでいた。それを間部詮勝(まなべあきかつ)老中暗殺計画などを滔々と述べ立てたものだから、結局、斬首に処せられてしまった」

 ──大人の男になりきれず、童貞で死んだとも

 「ただ萩の野山獄で、松陰はひとまわり年上の女囚高須久子と俳句のやりとりをしている。それを読むと互いに恋情はあったように私には思われる。少なくとも恋はしていますよ、松陰は」

 ──直情にして、いささか軽率という感じも

 「直情というか、信じたままに突っ走るのは、陽明学を学んだ影響でしょう。三島(由紀夫)さんの切腹などもそうだが、ああいう行動は現代では理解できない。今は功利が第一ですから」

 ──教育者・松陰にも疑問を呈しておられる

 「高杉晋作や久坂玄瑞などは確かに、松陰の影響を受けていると思われます。それは確か。しかし伊藤博文や山県有朋となるとどうなのでしょうかね。松陰のもとで学んだ時期はともに数カ月。実質はもっと短時日。人の出会いの重さは期間の長さではかれないところがあるにしても、あまりにも短い。この2人には松陰を利用するという点で、高杉や久坂には希薄な功利の匂いが強くします」

 

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