吉田松陰のヒーロー化されてきた歴史を見直し“実像”を描き出す 津本陽さん (3/3ページ)

2015.04.05

連載:ブック


津本陽さん【拡大】

 ──作家は別にして、松陰を研究した人の多くが山口県出身だと

 「松陰自身は大学者でも大革命家でもない。ただ薩長が尊王攘夷から尊王倒幕に方向を変えたとき、長州には薩摩の西郷隆盛に匹敵する統合のシンボルがいなかった。そこで持ち出されたのが、安政の大獄で死罪に処せられた松陰ではなかったかと。その延長でしょう、山口県では今なお松陰を尊崇する気持ちが強い。松陰自身はひたすら時代に立ち向かった人。戦前のように、イデオロギー的に利用されることを望んでいたかどうか」

 ■あらすじ 安政の大獄で刑死した松陰(吉田寅次郎)の生涯を描きつつ、ヒーロー化されてきた歴史を見直し“実像”を描き出した意欲的人物試論。松蔭は幕末という激動の時代を真摯(しんし)に生きる一方で、何事を成したわけもなく、思想家であり教育者の杉浦重剛が評したように「未成」に終わった。その彼を倒幕のシンボルとして長州藩が担ぎ、その後、山県有朋らの長州軍閥が「忠君愛国」の象徴的存在に据えたとする。教育者・松陰に関しても、山県や伊藤博文がどこまで師に倣ったかを疑う。松陰その人でなく彼を利用した側への疑念も見てとれる。

 ■津本陽(つもと・よう) 1929年、和歌山県生まれ。東北大学法学部卒。サラリーマン生活などを経て、78年、『深重の海』で直木賞を受賞し、作家生活に。歴史小説の第一人者として知られ、代表作に織田信長の存在意味を再認識させ、大ベストセラーとなった『下天は夢か』と、豊臣秀吉を描いた『夢のまた夢』、徳川家康を主人公にした『乾坤の夢』の「夢三部作」など多数。吉川英治賞、菊池寛賞などを受賞した。

 

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

90%以上の受講生が継続。ISO認証取得で安心品質のマンツーマン英会話が毎日受講できて月5980円!《体験2回無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。