奈良県や京都市の寺社で相次いで、文化財などに油のような液体がかけられている問題は、9日にも京都市の世界遺産・東寺や奈良県橿原市の橿原神宮でも見つかり、被害が計12件に上っている。奈良県警などは文化財保護法違反などの容疑で捜査しているが、液体の特定などに時間がかかり難航が予想される。手口は悪質な落書きなどとは異なり、専門家は「明確な悪意のある陰湿な犯行」とみている。
奈良県警などによると、液体をかけられる被害は3月下旬以降、同県桜井市の長谷寺本堂と同県明日香村の岡寺仁王門(重文)など5社寺で確認。京都市中京区の二条城では2月12日に計20カ所で見つかっていた。
また、8日には奈良県吉野町の世界遺産、金峯山寺(きんぷせんじ)の本堂(国宝)や同県葛城市の當麻寺(たいまでら)で、9日には東寺の国宝・御影堂や、奈良県橿原市の橿原神宮の拝殿などでも確認された。
最初に被害が確認された岡寺では3月28日昼ごろ、液体がまかれた痕跡を発見。水がかかった跡かと思われたが消えなかったため、4月4日に県警に届け出た。液体はペットボトルなどの容器からかけたとみられ、アロマオイルのような甘いにおいがするという。
奈良県警は捜査を進めているが、文化財に染みこんだ液体は削り取ることができず、金属部分に付着したものを綿棒で取るなどしており、採取量が少なく分析は難航。防犯カメラの解析も進めているが映像が不鮮明で確認作業が遅れている。