日本のマスコミは「強行採決」という言葉を好んで使う。ちなみに米国には日本語の強行採決に該当する用語はない。一般的な米国人は「強行採決反対!」とたびたび大騒ぎする日本人が理解できないだろう。
そもそも、民主主義とは賛否両論の議題について、過半数を取った側の意見に全員が従うルールである。どちらが過半数なのかを知るには、採決が必要不可欠となる。
民主党政権時代に1〜6時間程度の審議で次々に採決された法案について「強行採決だ!」と叫ぶのなら分かるが、安全保障関連法案については110時間を超える審議後である。これを強行採決として批判するのは、情緒的すぎると思う。
今回の採決を受けて、内閣支持率が5〜10ポイントほど下がるとの分析があった。安倍晋三政権に批判的なマスコミが、わざわざ「強行採決」と報じる最大の目的はこれだろう。
国会中継はあまり見ていないが、報道を見る限り、議論は十分尽くされたのかという疑問は残る。法案の具体的内容に関する議論はほとんど聞かれず、「憲法違反だ」「自衛官のリスクが増す」など、周辺の議論ばかりが目立ったというのが、私の印象である。
ただしこれは、時間稼ぎと安倍政権のイメージダウンを目的とした審議を行った野党に責任がある。また、某閣僚の「国民の理解が進んでいるとは言えない」との発言は率直な見解だと思うが、次期首相を狙う下心も透けてみえる。