国民一人一人に12桁の個人番号を割り当てるマイナンバー制度が5日、本格始動した。年金や税、健康保険などの手続きが効率化されるメリットがある半面、企業の事務負担増大や個人情報漏れの懸念、国民の理解の遅れも目立ち、スタートから混乱も予想される。
マイナンバー法施行を受けて個人番号の「通知カード」を簡易書留で発送する作業がスタートし、約5500万世帯に10月中旬から11月末にかけて順次届く見込みだが、ここが最初の難関となる。受取人不在や住民票の住所を変更していないなどの理由で届かないケースも大量に発生するとみられるためだ。
企業は従業員や扶養家族の個人番号を集めて源泉徴収票や社会保障関連の書類に記載し、税務署などに提出するが、事務負担も重くなる。
個人番号などの情報漏れも心配だ。政府は、各行政機関が個人情報を分散管理しており、番号が流出しても芋づる式に情報が漏れることはないと説明するが、従業員の番号を扱う企業や、市区町村でのシステム改修などの準備は遅れている。
内閣府の調査では、7〜8月時点でもマイナンバー制度の内容を知らない人が過半数に上る。今後、行政窓口や職場で混乱が起きる恐れもある。
会社に内緒で銀座のクラブやキャバクラで働くOLや、ネットオークションなどの副収入があるサラリーマンにとっては、会社に副業がバレるのではとの懸念が広がっている。副業で得た収入が「給与所得」の場合、住民税額が本業の会社に通知される可能性があるが、「雑所得」の場合は確定申告時に住民税を自分で納付できる。そもそもマイナンバー導入以前から本業以外で年間20万円を超える所得のある人は確定申告の必要がある。申告していなかった人には税務署の目が厳しくなりそうだ。