平泉の世界遺産は「仏国土(浄土)を表す建築・庭園および考古学的遺跡群」として登録されており、中尊寺大池伽藍(がらん)跡、毛越寺庭園、観自在王院跡、無量光院跡の4つの浄土庭園も金色堂や経蔵と同様に重要です。
これらは神聖な山である金鶏山に焦点を合わせ、日本固有の自然信仰と阿弥陀如来の極楽浄土思想を融合させて、この世に仏教的な理想世界を築こうとした奥州藤原氏の「夢の跡」なのです。
全盛期の平泉を訪ねた西行法師がたたえた束稲(たばしね)山も今では桜ではなく、つつじの名所になっていますが、西行も芭蕉も平泉の魅力を今日に伝えた優秀な語り部かと思います。
マルコ・ポーロの黄金の国ジパング伝説や義経の北行伝説も現地の語り部によっては将来、平泉の遺産として語り継がれるのではないでしょうか。
■黒田尚嗣(くろだ・なおつぐ)慶應義塾大学経済学部卒。現在、クラブツーリズム(株)テーマ旅行部顧問として旅の文化カレッジ「世界遺産講座」を担当し、旅について熱く語る。