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福島第1原発事故を受け、原発の安全規制を担う国の機関として2012年、環境省の外局として原子力規制委員会が置かれ、実施組織として原子力規制庁が発足した。規制委は新規制基準を定め、それに適合した原発から政府は再稼働を進める。安倍晋三首相は「世界で一番厳格な原子力規制」とするが、内実を調べると不安が多い。
私は昨年7月、再稼働第1号となった九州電力川内原発(鹿児島県)を取材した。プラント設備には、ワイヤが巻き付けられたり、巨大な金属製の檻(おり)に入ったりして、外見が複雑になっていた。これは国内の観測史上最大級の超巨大竜巻や、この地域で過去に例のない超巨大地震に耐える設備だという。
しかし、専門家は「小規模地震など頻度の高い災害に備え、重要部分に安全対策を集中した方がよい」と指摘する。
各電力会社の原子力担当者は今、自社の原発を「ゴテゴテプラント」と自嘲している。規制委の指導で「起こり得る危険ごとに、過剰に安全設備をつける」という取り組みをしているためだ。
専門家は、こうした安全対策は「やってはいけない」という。管理設備が多いと事故の場合に手順が複雑になり、適切な対応が行えないからだ。また、金銭と時間の対策コストが膨らむ。
このような原子力規制を他国は行っていない。
米国やフランスの規制当局は、起こる可能性のある高い事故やトラブルを洗い出し、すべてに対策をするのではなく、より危険な事象を防ぎ、特に重要な設備を守る「確率論的リスク評価」を採用している。メリハリを付けた対策で、時間とコストを節約する。
規制当局の人的能力も懸念されている。