既存の軽水炉型原発のエネルギー源に使う「プルサーマル発電」という方法で、プルトニウムを使える。だが、原子力規制委員会の審査が遅れて原発が稼働せず、この発電もできない。
ある政治家が気になることを言った。
「現時点で、党内に核武装論は皆無だ。ただ、非公開の場で『プルトニウムを一定量持ち、将来の外交カードとして残したい』という考えを述べる政治家が何人かいる」
中国や北朝鮮の危険な外交への対抗のためだろうが、その趣旨での保有は、原子力を平和利用する日本の国是に反し、国際的な対立を深める。
重要な問題であるプルトニウムの行方について、政治でも、国民の間でも関心が乏しい。こうしたなか、2018年には、原子力の平和利用を決めた日米原子力協定が更新期限を迎える。
プルトニウムの管理、そして、核燃料サイクル政策の是非について、今こそ国民的議論を深めるべきだ。
■石井孝明(いしい・たかあき) ジャーナリスト。1971年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。時事通信記者、経済誌記者を経て、フリーに。エネルギー、温暖化、環境問題の取材・執筆活動を行う。アゴラ研究所運営のエネルギー情報サイト「GEPR」の編集を担当。著書に「京都議定書は実現できるのか」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞)など。