あいまいな「地震予知」がもたらす悲劇 イタリアで地震予知失敗の裁判 (2/2ページ)

2016.07.22

 イタリアの裁判は対岸の火事ではない。日本でも、国が安全を保証したのに大地震が起きたことがある。さる4月16日に熊本で起きた最大の地震の前がそうだった。4月14日の地震の後、気象庁や政府が「家に帰れ」と呼び掛けていたのだ。

 もっと大きな問題もある。いまは南海トラフ地震と一緒に起きると考えられている東海地震は「大震法」(大規模地震対策特別措置法)という法律ができていて、気象庁にある判定会(地震防災対策観測強化地域判定会)が「予知宣言」を出し、それによって新幹線も東名道路も、デパートやスーパーの営業も止めることになっている。

 この地震予知が可能かどうかは強く疑われているが、阪神淡路大震災が起きたあとも、また東日本大震災が起きたあとも、政府の公式見解は「東海地震だけは予知できる」というものだ。

 しかし、なにか前兆風のものが見つかって、いったん「宣言」が出されてから、すぐに大地震が来なかったらどうするのか、その方針は決まっていない。宣言を取り消せる科学的な根拠や方程式はなにもない。

 新幹線や東名高速道路が止まり、静岡県などが孤立した状態は経済的にも人心にも打撃が大きい。それを何日も続けるわけにはいくまい。

 こうして判定会の科学者や気象庁の委員が、迷いながらでも、渋々でも、「宣言の解除」を出す。

 しかしそのあとで大地震が襲ってきたら…。イタリアとまったく同じことが起きるに違いない。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。著書多数。最新刊に『地震と火山の基礎知識−生死を分ける60話』(花伝社)。

 

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