安倍晋三首相は、12月26、27日にハワイの真珠湾を訪問する。
5月の伊勢志摩サミットの際、オバマ米大統領が広島平和記念公園を訪れ、原爆慰霊碑に献花したことは記憶に新しい。そのときから、安倍首相の真珠湾訪問は時間の問題であったとはいえ、日米両国の間で歴史問題を終わりにして、未来志向の同盟関係をしっかりアピールできる格好の舞台になる。このため、日米から訪問を評価する声が出ている。
歴史的な意義も大きい。戦後処理というのは古今東西どの国でも大変である。戦争責任や謝罪が伴うためだ。第一次大戦と第二次大戦を経た欧州では、戦争責任も謝罪もなく、敵と味方がともに犠牲者を追悼するという和解方式をとっている。1995年に米英とドイツが共同で犠牲者を追悼した「ドレスデン和解」が代表例である。
これに対し、アジアでは、中国と韓国のように、日本の戦争責任を主張し、まず謝罪せよ、という古いタイプの言い方がまかり通っている。今年は日本だけがいち早く欧州型の和解(戦争責任・謝罪なしで、ともに追悼)を取り入れた記念すべき年になるだろう。
安倍首相は、歴代首相の誰よりも外交に力を入れている。延べ訪問国数は100カ国を超え、歴代トップだ。その思いは「戦後」を終わらせることだろう。
第1次安倍政権で「戦後レジームの総決算」という言葉が使われていたが、今は聞かれない。言葉よりも行動で実践しているのだ。
オバマ大統領の広島訪問、安倍首相の真珠湾訪問によって、日米同盟は揺るぎなく新時代に入った。と同時に、12月にはプーチン大統領の訪日もあり、日露平和条約が俎上にのぼろうとしている。日露間でも戦後は終わっていない。