しかし、五箇山はこれら合掌造りの建物やその取り巻く自然景観の美しさだけではなく、風土に育まれた土地の民謡「こきりこ節」や伝統的な踊りも魅力です。特に五箇山独自の「まいまい」は男女交互に手をつなぎ、円を描いて踊るので日本最古のフォークダンスと呼ばれています。
南砺市はこの「五箇山の集落」に今回の「城端曳山祭り」を加えると、市内に2つの世界遺産を有することになりますが、真の遺産はやはり目に見える建物や曳山(山車)よりもその文化を大切につなぎ伝えてきた土地の人々の心かと思います。
南砺市にはまた、彫刻で有名な井波という私の故郷、伊賀上野にも似た「時の流れの忘れ物」のような町があります。五箇山や城端の世界遺産を訪ねた際にこの井波の地にも立ち寄れば、南砺の旅は表面的な感動だけでなく、土地の人々の生活や受け継がれてきた伝統、助け合いによって守られてきた文化に対する「気づき」も楽しむことができるでしょう。
■黒田尚嗣(くろだ・なおつぐ) 慶應義塾大学経済学部卒。現在、クラブツーリズム(株)テーマ旅行部顧問として旅の文化カレッジ「世界遺産講座」を担当し、旅について熱く語る。