東京都内で3月以降、電車内で痴漢を疑われた男が駅のホームから線路に飛び降りて逃走する事件が、4月30日までに7件相次いだ。安全確認のため運行再開には時間を要し、多くの利用客に迷惑が掛かる。過去には逃走時に電車にはねられる死亡事故もあり、鉄道会社は「危険な行為なので絶対にやめて」と呼び掛けている。
「お尻触りましたよね?」。3月14日朝、通勤客らで混み合うJR埼京線の電車内で、20代の女性会社員が声を上げた。「私じゃない」。近くにいた中年の男は否定し、促されるまま池袋駅で下車したが、直後に女性の肩を突き飛ばし、線路に飛び降りて走り去った。
同様の事件は3月29日に赤羽駅、4月17日に新宿駅などでも続いた。ダイヤの遅れは最大30分程度だったが、出勤や帰宅を急ぐ客らは足止めをくらい、インターネットの投稿サイトに「多くの人を巻き込んで大迷惑」「埼京線またかよ」といった書き込みが並んだ。
2001年10月には、JR御茶ノ水駅で痴漢の疑いで問い詰められた男が線路を逃走し、神田川に転落して死亡。03年9月も、JR上野駅で取り押さえられた男が駅事務所に連れて行かれる際に線路へ飛び降り、電車にはねられ死亡している。
正当な理由なく線路に立ち入れば、鉄道営業法違反に問われる可能性がある。警視庁は同法違反や東京都迷惑防止条例違反(痴漢)容疑で調べているが、7件はいずれも警察官が到着する前に逃走していた。