引率の男性教師は「こうした歴史教育を通して、子供たちに国を守ることの大切さを知ってほしいのです」と語った。
そして、日本からの慰霊団が会場を去ろうとしたとき、驚嘆すべき出来事がおこった。
濛々と立ちあがる砂ぼこりとともに、「日の丸」の小旗を振る子供たちの一団が押し寄せてきたのだ。わが目を疑った。弾けるような笑顔と歓声にあふれた子供たちの「日の丸行進」は途切れることはなかった。この光景を目の当たりにして、私はもはやこみ上げる感情を抑えきれず、嗚咽を漏らしてしまった。
マバラカットの式典に参加していた画家のダニエル・ディゾン氏は、自宅に「カミカゼ・ミュージアム」を設けて、神風特攻隊の顕彰を行っているフィリピン人だ。
「35年前、私は神風特攻隊の本を読んで涙が止まらなかったのです。当時、白人は有色人種を見下していた。日本は『世界のあらゆる人種が平等であるべきだ』として戦争に突入していった。神風攻撃隊は、白人の横暴に対する最後の抵抗だったのです。こんな勇気や忠誠心を聞いたことがなかった。同じアジア人として、このような英雄を誇りに思います」
私の手を握って、ディゾン氏は続けた。
「神風特攻隊をはじめ、先の大戦で亡くなった多くの日本軍人をどうか敬ってほしい。これは私から日本の若者たちへのメッセージです」
アジアは中国・韓国だけではない!
アジアには親日国家・フィリピンがいる!
■井上和彦(いのうえ・かずひこ) 軍事ジャーナリスト。1963年、滋賀県生まれ。法政大学卒。軍事・安全保障・外交問題などをテーマに、テレビ番組のキャスターやコメンテーターを務める。航空自衛隊幹部学校講師、東北大学大学院・非常勤講師。著書に「国防の真実」(双葉社)、「尖閣武力衝突」(飛鳥新社)、今回の連載のもとになった「日本が戦ってくれて感謝しています−アジアが賞賛する日本とあの戦争」(産経新聞出版)など。