中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)が5日、北京で開幕した。全人代直前の1日夜には雲南省・昆明駅で無差別殺傷事件が発生し、170人以上の死傷者が出た。治安当局は、新疆ウイグル自治区の独立派による組織的なテロと断定、北京をはじめ主要都市で警戒態勢を敷いている。一部勢力がイスラム過激派と繋がりがあるともされるウイグル族。習指導部の少数民族への強硬策が、「テロの連鎖を生んでいる」(専門家)という。
昆明駅での惨劇は、警備体制の「盲点」を突く形で起きた。
「全人代に備えて、公安当局は北京とその周辺のほか、新疆や青海省など内陸の6省・自治区を重点的に警戒強化していた。昆明での事件はその裏をかかれた格好だ。習指導部にとって失態のダメージは小さくない」(中国共産党筋)
公安当局は犯行を新疆ウイグル自治区の独立を求めるウイグル族の組織と断定している。
中国事情に詳しい評論家の宮崎正弘氏は「独立派の最大組織に、ドイツ・ミュンヘンに本部を置く『世界ウイグル会議』がある。主流派の彼らは、非暴力による独立を訴えて過激な行動に走ることはない。(犯行については)イスラム過激派組織『アルカーイダ』との関与が疑われる強硬派の存在がささやかれている」と話す。
強硬派の中で、国連でもテロ組織と規定されているのが、「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」だ。
外務省や公安調査庁の公開資料によると、1997年に組織されたとされ、「アルカーイダ」やイスラム原理主義勢力「タリバン」と共闘関係にあったとされる。96年に結成された「東トルキスタン解放組織」も、メンバーがタリバン政権下のアフガニスタンで軍事教練を受け、中国や中央アジアでテロ活動を行っているとされる。