北朝鮮の金正恩政権による対日接近の本格化に韓国が神経質になっている。北朝鮮の狙いは、孤立してしまった国際評価の転換や人道支援への期待などだが、韓国にとって日朝関係が南北関係より進展すると、統一問題を最優先政策にしている朴槿恵大統領のメンツにかかわる大問題なのだ。2002年の小泉訪朝時がそうだったのだが、北朝鮮は孤立すると対日接近してくる。というわけで、気の早い韓国からは「安倍晋三首相も電撃訪朝?」などと心配する声までささやかれている。(久保田るり子)
■金正恩政権、拉致問題はどこまで本気?
日朝政府間協議が1年4カ月ぶりに4月にも再開することが決まった。
「対話を求める北朝鮮の態度は予想以上だ」
今月上旬から始まった非公式協議で日本側は手堅い感触を強めている。“本気度”のひとつの根拠になっているのは、北朝鮮側の交渉陣に国家安全保衛部(秘密警察)幹部が出てきたことにある。
北朝鮮に留められている日本人拉致被害者の管理の実態は長い間不明だったが、ここ数年、「拉致被害者は居住地が移され、2008年ごろから国家安全保衛部の管理下にある」との有力情報もあり、首脳部に直結する保衛部が日本人拉致問題を主導していることがはっきりしてきた。拉致が動いた小泉訪朝も、日朝水面下交渉で北朝鮮を代表したのは「ミスターX」と呼ばれた柳(リュ)京(ギョン)・国家安全保衛部副部長だった。
横田めぐみさんの娘、ウンギョンさんと横田滋、早紀江さんの面会についての日朝の事前協議は約2カ月前から行われていた。それに加えて日本人遺骨返還に関する赤十字会談について、北朝鮮側が2月後半に協議の提案を行ってきた。こうした動きで日本側には「北朝鮮は本気で動きだそうとしている」との認識が生まれたという。
局長級で再開する政府間朝協議で日本側は、2008年に合意した再調査に立ち返って被害者の安否情報の確認作業の要求からスタートさせる考えだ。