中国公安省は150人以上の腐敗官僚が米国に逃亡しているとして、米司法当局に身柄の確保と引き渡しを求めていく方針を決めた。12日付の中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報などが伝えた。習近平指導部が進める綱紀粛正の一環だ。
米中は犯罪人引き渡し条約を結んでいないが、中国側は米司法当局とのハイレベル協議開催などを通じ、捜査への協力を要請する。
中国公安省国際協力局長の廖進栄氏によると、収賄事件にからむ腐敗官僚の海外逃亡先は米国が最多だが、過去10年間に米国が中国に引き渡した逃亡者はわずか2人。廖氏は「米国は中国の司法関連制度や手続きを誤解している」などとして、米側が人権問題などを理由に身柄引き渡しに慎重な姿勢を示していることに強い不快感を示した。
中国では、官僚が家族を海外に移住させ、汚職や賄賂などで不正に稼ぎ出した個人資産を海外に移した上で自分だけが国内に要職で残る、高飛び予備軍「裸官」への批判も強まっている。
国営金融機関の中国人民銀行が一昨年公表した「腐敗資産の国外持ち出しに関する調査報告書」では、1990年半ば以降、汚職官僚や国有企業幹部の国外逃亡数は「1万6000〜1万8000人」と試算している。
新著『中国 大嘘つき国家の犯罪』(文芸社文庫)が話題となっている評論家の宮崎正弘氏は「国内向けのジェスチャー(=意思表示)だ。中国も、本気で取り戻せるとは思っていない」といい、こう続ける。
「国外逃亡者の大半が所在不明になっている。今回の約150人は、弁護士を立てて人権擁護などで中国に対抗している人々だろう。中国が引き渡しを求めれば、米国側も要求を突き付けてくるので実際は困難だ。腐敗摘発を続けている習政権としては、国内の官僚を『まだ摘発するぞ』『海外逃亡は許さない』と威圧したのではないか」