「イスラム国」による日本人殺害脅迫事件を受け、中国政府は国内にテロが“飛び火”することへの警戒を強めている。中国では、ウイグル族に対する弾圧政策の結果、イスラム教徒らの国外逃亡が相次いでおり、出国後に「イスラム国」に合流するケースも少なくないとされる。中東でテロのノウハウを学んだ者が帰国し、中国当局への「報復テロ」に打って出る可能性が現実味を帯びているのだ。
「習近平国家主席体制になって、ウイグル族への弾圧は激しさを増している。新疆ウイグル自治区にはイスラム教徒が多く、耐えかねて、逃げ出した人々の中には、『イスラム国』に加わる者もいるようだ。こうした人々が報復してくることは十分に予想される」
中国事情に詳しい評論家の石平氏はこう指摘する。
中国公安省は昨年5月から今年1月中旬までに、雲南省(中国西南部)などの国境地域で、ベトナムなどに密出国しようとした800人超の容疑者を拘束した。そのほとんどが新疆ウイグル自治区出身のイスラム教徒で、中東などへの逃亡が目的だったとみられている。
石平氏は「中国にとってイスラム国によるテロは人ごとではなく、当局も警戒し始めている」と語る。
実際、中国共産党機関紙・人民日報系の「環球時報」は、新疆ウイグル自治区で相次いでいる爆破事件について、「自治区のウイグル族が違法に出国してシリア、イラクなどでイスラム国の活動に参加し、中国に戻ってテロをしている」との見方を伝えている。