キム・ギドク監督「いま、韓国では民主主義が殺されている」 (1/4ページ)

2015.12.28

 日本で熱烈な信奉者を増やす韓国人監督がいる。キム・ギドク、54歳。韓国の東南部、慶尚北道の山村に生まれ、工場勤務を経て20歳で海兵隊に志願。除隊後はパリに渡って絵を売って生計を立てる。帰国後、脚本家として映画業界に入った。暴力や性描写の過激さから長く不遇を味わうが、ヴェネチア、ベルリン、カンヌの世界三大映画祭で賞を獲得。国内を飛び越え、いまやアジアを代表する監督になったが、彼の映画哲学の原点には、韓国という国が抱えるゆがみが垣間見える。(取材・文/ジャーナリスト・三好健一)

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 キム・ギドク監督は、韓国映画に対する世界の評価を、たった一人で変えた男だ。社会批判を強烈に漂わす作品をコンスタントに世に問い続け、世界の有力な映画賞を総なめにしてきた。韓国社会の「民主主義」の内実をえぐり出す新作『殺されたミンジュ』が、2016年1月16日から日本で公開される。

 映画はミンジュという名の少女が、謎の男たちにガムテープで窒息死させられるシーンから始まる。殺害の理由の説明は一切ない。

 復讐のために組織された「シャドー」という7人の集団が現れ、殺害にかかわった政府機関の人間を一人ずつ拉致し、「去年5月9日に何が起きたか、お前がしたことをすべて書け」と命じる。断れば、拷問にかける。痛快な復讐劇かと思わせながら、そこで終わらないところも、キム・ギドクらしい。

 荒唐無稽な設定のなかに、突き刺すリアリティを潜ませる。その危ういバランス感覚が、彼の作品の最大の魅力であり、最大の難所でもある。この複雑な物語を10日間で撮りきったというから驚かされる。

 キム・ギドクとのインタビューは、少女ミンジュの死の意味を尋ねる質問から始めた。答えは明快だった。

 「殺されたのは少女ですが、それだけではありません。彼女のミンジュという名前は、韓国語では民主の意味でもあります。いま、韓国では民主主義が殺されている。そのことを批判した作品なのです」

 復讐集団「シャドー」の7人の顔ぶれは、安月給の自動車整備工や、借金に追われた者など、幸福そうな人間はいない。ミンジュの家族であろうと思われるリーダーも、防空壕のなかで暮らす元軍人である。

NEWSポストセブン

 

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