国連教育科学文化機関(ユネスコ)のイリナ・ボコバ事務局長(63)が、今年末で任期が切れる潘基文(パン・ギムン)国連事務総長の後任に出馬表明し、有力候補に挙がっている。
昨年10月、中国申請の「南京大虐殺文書」がユネスコの記憶遺産に登録された。審査過程が不透明で問題だが、その最終判断を下した人物だ。
ブルガリア出身で、冷戦時代、モスクワ国際関係大に留学し、外交官になった。1996〜97年ブルガリア外相を務め、2009年から現職にある。
ボコバ氏は昨年5月、モスクワで開催された対独戦勝70周年記念式典に出席した。ウクライナ問題をめぐり欧米の首脳らが軒並み、参加を見合わせた行事である。
9月の北京での抗日戦争勝利70周年記念式典にも駆けつけた。こちらも、軍事力を誇示するパレードだ。ひな壇で中露の首脳らと並び立つ姿は、ユネスコ事務局長に似つかわしくなかった。
国連憲章97条は「事務総長は、安全保障理事会の勧告に基づいて総会が任命する」と定めているが、実態は、安保理の常任理事国(米英仏中露)が密室で決めてしまい、総会(全加盟国=193カ国)はこれを追認するだけだ。
事務総長は「5大国の意中の人物」になるはずである。もっとも、米英仏中露の利害はめったに一致しないから、いずれとも折り合える「毒のない人物」に落ち着くといえるかもしれない。