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成長が鈍化しつつある中国でも、そこは人口約14億人を誇る大国、電力需要は底知れない。その旺盛なエネルギー消費を支えているのが原子力発電所だが、体制批判が許されない同国ではほとんどの事故が隠蔽される。かの地の危うき原発事情を2回にわたってリポートする。
中国広東省で新たに建設されている原子力発電所に対し、隣接する香港で不安が高まっている。
問題とされているのは、同省台山市に中国国有の中国広核集団とフランス電力の合弁で建設中の台山原発だ。
すでに完成している2機の原子炉は、アレバNP、フランス電力、シーメンスが共同開発したEPR(欧州加圧水型炉)と呼ばれる第3世代モデルだ。これから安全検査に入り、営業運転は数年後になるとみられていた。
ところが、香港の独立系通信社『ファクトワイヤ』(1日付)が同原発建設に携わるフランス人技術者の証言として伝えたところでは、最低2年を費やすべき安全検査を中国側が1年で済ませ、来年中にも稼働させるよう現場に要請しているというのだ。
またこのEPRは、昨年4月にアレバNPが行った圧力試験で、屋根と底の部分に脆弱性が見つかり、採用を決めていたフィンランドとフランスの原発建設計画が中断しているいわくつきの原子炉なのである。
体制批判が許されない中国では原発政策に関わる言論の統制は特に厳しく、中国国内ではこうした事実は報道すらされず、地元の台山市でも市民らによる反対の声は大々的には上がっていない。しかし、同原発からわずか約130キロの距離にあり、さらに偏西風の風下に位置する香港では、市民団体による反対運動が行われている。
中国の原発に対する香港市民の不信感は、根強い。香港と隣接する広東省深●(=土へんに川)市ではすでに、大亜湾原発と嶺澳原発の2つが稼働しているが、たびたび人為的なヒヤリ・ハットを起こしているのだ。