誤解を恐れずに言おう。北朝鮮に核兵器開発を断念させるには、核兵器開発によって北朝鮮が生き残れなくなることを自覚させる必要がある。しかし、北朝鮮は、中国が自国を見捨てず、失うものが多過ぎる韓国に第二次朝鮮戦争を戦う意図がないことを既に見抜いている。物騒な話だが、金正恩朝鮮労働党委員長に「現実に体制が崩壊する」という究極的な危機感でも持たせない限り、彼らは核兵器を断念しない。「冷静ある態度を維持し、偶発的衝突を避けつつ、真に実効性ある制裁を発動する」ことの限界はもう明らかだろう。
恐ろしい仮説ではあるが、韓米日が第二次朝鮮戦争でも覚悟しない限り北朝鮮は関係国の足元を見続ける。今回の核実験が示すのは、このような「不都合な真実」なのだ。
【プロフィル】宮家邦彦(みやけ・くにひこ) 昭和28(1953)年、神奈川県出身。栄光学園高、東京大学法学部卒。53年外務省入省。中東1課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを歴任し、平成17年退官。第1次安倍内閣では首相公邸連絡調整官を務めた。現在、立命館大学客員教授、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。