【北京=矢板明夫】ノーベル平和賞に対抗して中国で設立された「孔子平和賞」の今年の最終選考リストが固まった。同賞実行委員会の関係者によると、今年の授賞候補は13の個人と1団体に絞られ、国連の潘基文事務総長、シリアのアサド大統領、ドイツのメルケル首相、ノーベル平和賞受賞者であるミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相らが含まれている。
今後、選考委員会の審査と投票を経て受賞者を決め、ノーベル平和賞授賞式前日の12月9日、北京で授賞式を行う予定だ。
関係者によると、ここ数年は「日中関係やアジアの平和への貢献」を理由に、対中融和的な鳩山由紀夫、福田康夫、村山富市元首相ら日本人候補が毎年のように最終選考に残っていた。
しかし昨年、最終投票で最も多く得票した村山氏が賞を辞退したこともあり、「日本人は賞を受け取らないかもしれない」との見方が広がり、今年の候補者リストからは日本人の名前が消えたという。
一方で、▽中国当局寄りのチベット仏教指導者パンチェン・ラマ11世▽台湾出身の僧侶、星雲法師▽インドネシアの華僑リーダー、李文正氏▽マリで殉職した国連平和維持活動(PKO)部隊の中国人隊員・申亮亮氏ら、中国系の7個人と1団体が選ばれた。
同賞は2010年末、中国政府に批判的な民主化活動家、劉暁波氏のノーベル平和賞受賞決定を受けて、急遽設立された。民間団体が主催する形を取っているが、中国当局が背後で関与しているとの指摘もある。
これまでの受賞者は、台湾の連戦元副総統、ロシアのプーチン大統領、ジンバブエのムガベ大統領ら。しかし、本人に事前の相談なしに賞を与えられたことに戸惑い、賞を辞退する人が続出した。中国国内のネット上では「茶番だ」との批判が寄せられている。