「閉店ラッシュ」に襲われたのは百貨店だけではない。スーパーマーケットも同じである。
中国最大の検索サイトである「百度」は、「百度百科・閉店ラッシュ」の項目を設けているが、それによると、スーパー業の場合、華潤万家という全国チェーンが今年に入ってから727店舗を閉店させ、「閉店ラッシュ」の最高記録を更新したという。有名なカルフール・グループも中国全土で18店舗を閉店し、人人楽というスーパー大手は11店舗を閉めた。
上述の「百度百科・閉店ラッシュ」によると、中国小売業の閉店ラッシュは昨年からすでに始まっている。2015年の1年間、全国の小売業界で約865店舗も閉店の憂き目にあったが、今年に入ってから、この勢いはさらに増しているという。
「閉店ラッシュ」が来襲した理由について、一部のメディアや専門家は、近年盛んになったネット販売や通販との市場競争の激化を挙げているが、前述の北京商報や「百度百科」の分析では、それは一つの原因であっても、一番の原因ではない。最大の原因はやはり、特に昨年から顕著となった中国経済そのものの低迷である。
経済の低迷は人々の消費意欲と購買力を低減させ、結果的に小売業の業績不振と閉店ラッシュを招いたが、閉店ラッシュの広がりは失業の拡大や収入の低減につながる。悪循環はすでに始まっているのである。
今月5日、中国社会科学院財経戦略研究院は「流通青書・中国商業発展報告(2016〜17)」を発表したが、その中で、今後5年以内に、中国全国の「商品交易市場」、つまり百貨店やスーパーやショッピングセンターなどは、約3分の1が淘汰(とうた)されていくと予測している。
小売業の暗澹(あんたん)たる未来ひとつを取ってみても、中国経済は今後ますます、大不況のどん底に陥っていくことが分かるであろう。
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【プロフィル】石平
せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。