中国の経済的躍進を支えてきた東北部において、人口危機の波が押し寄せている。拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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ドナルド・トランプの大統領選勝利に大きく貢献したとされる米国・ラストベルトの没落した元中間層の人々。米国で顕著となった没落した労働者の激しい怒りは、そのまま中国の東北三省における伝統的産業の衰退に苦しむ国有企業の労働者の不満に結びつけて考えられる。
中間層の形成は、中国において国有企業に属する労働者が中心になったことはよく知られているが、概括すると彼らは2000年代に入ってからの約10年間、我が世の春を謳歌した。
現在の中国経済が直面する問題の一つが、無軌道に拡大された設備投資に反し、国内外の需要が急速に弱まったことを背景にした生産過剰であることは言うまでもない。その中心が炭坑と鉄鋼であり、ともに中心は東北三省にある。
すでに賃金の遅配などの問題が起きていることは、国内メディアの報道でも明らかになっているが、現地ではもはやそれどころでない問題が持ち上がってきているようなのだ。
その実態を明らかにしたのが2016年10月25日に放送された瀋陽テレビの報道番組である。
タイトルは、〈東北部で人口危機が逼迫 出生率は低下 人口流出が深刻化〉だ。