金正男氏、暗殺か−−。この驚くべきニュースが世界中を駆け巡ったのは14日のことだ。事件が発生したのはマレーシア・クアラルンプール国際空港で、毒殺という古典的な手法であったとも伝えられている。
手を下したとみられるのは、インドネシア国籍の女とベトナムのパスポートを持っていた女で、現地警察に逮捕された。
この原稿を書いている現在、事件の全貌が明らかになったわけではないが、現地警察は北朝鮮国籍の男1人を逮捕し、逃走中の4人の氏名を公表した。韓国統一省は「背後に北朝鮮政権がいる」との見方を示している。
「やり過ぎたんですよ。正男氏は超えてはならないレッド・ラインを越えてしまった。だから中国では、昨年末ぐらいから彼が危ないという話は出ていたんです。それにしても、本当に殺すなんて…」
中国の関係者は深いため息を漏らす。
中国は早くから正男氏との関係を築いてきた。だが、それは巷間(こうかん)言われているように北朝鮮に対する「外交カード」といった扱いではない。
「もはや正男氏の政治的な価値はほとんどありません。扱いとしてはカンボジアのシアヌーク殿下と同じです。北京の東部に邸宅を与え、いまも妻と娘が住んでいます。窓口である党中央対外連絡部(中連部)は密に連絡をとっていましたが、中国にとっての利用価値があるからではありません。彼は人柄が人懐っこくて誰にでも好かれていたので、中国では党から軍に至るまで人気があり、しょっちゅう宴席に招かれていました」(外交関係者)
北京では正男氏が頻繁に出没する場所としてケンピンスキーホテルが有名だが、崑崙ホテルには軍幹部と会うための専用ルームも用意されていた。