亀の甲より年の功とはいうものの、最近90歳になった村山富市元首相のこのところの言動は、あいまいで軽すぎ、危ういと感じる。他の何人かにも言えることだが、元首相という重い立場をわきまえてほしい。
先月27日の日本記者クラブでの記者会見では、こんなことがあった。村山氏は慰安婦募集の強制性を認めた平成5年の河野談話について、冒頭から事実に反することを述べていた。
「(日本政府が)実際に慰安婦の皆さんに会って証言を求めたようなことはないかもしれない」
だが、甚だおざなりではあったものの、政府が韓国で元慰安婦16人の聞き取り調査を行い、それを河野談話の根拠としたことは議論の大前提だ。耳を疑うとはこのことである。
この点に関しては、さすがに記者側から「当時の宮沢喜一政権は元慰安婦16人からヒアリングをしている。それで事実関係はよろしいか」と確認が入ったが、それに対する村山氏の答えはこうだった。
「はいはい。それは慰安婦から聞いていますね。訂正してください」
この程度の認識で河野談話について「事実がなかったと言ってあげつらって何の意味があるのか」「そんな軽はずみに根拠も何もないのにつくった作文ではないと思う」と擁護・発信されても当惑してしまう。
おやっと思った点はまだある。安倍晋三首相が「侵略という定義については定まっていない」と述べたことについて、「(植民地支配と侵略を謝罪した)村山談話と矛盾を感じたことはないか」との質問に、村山氏は言葉を濁したのだ。