安倍晋三首相が先月の衆院予算委員会で、閣僚の献金問題を追及する民主党議員に「日教組はどうするんだ」とやじを飛ばした問題が物議を醸している。首相はこのほか「教育会館から献金をもらっている民主党議員がいる」と答弁し、後に事実誤認を認めて発言を撤回、陳謝した。
自らの答弁が勘違いであると分かれば、ただちに訂正するのは当然だ。ただ、首相が質問者と直接関係ない日教組に言及し、それに民主党側が「デマ首相」(枝野幸男幹事長)と批判するほど強く反発したのはなぜだろうか。
ここをきちんと押さえておかないと、何が問われているかが分からない。そこで「日教組のドン」と呼ばれる民主党出身の輿石東(こしいし・あずま)参院副議長の地元、山梨県の元教員に感想を聞くと、こんな答えが返ってきた。
「山梨の場合、教育会館は山梨県教組の選挙資金の集配所になってきた。同時に、ここに組合員を集めて投票依頼の電話をさせる選挙活動の拠点だった。安倍さんは言い方はともかく、本質的に間違ったことを言ったわけではない」
■選挙で半強制カンパ
日教組は民主党の有力支持団体であり、中でも山梨県教組は組織率9割を背景に高い集票力を誇る。昨年12月の衆院選でも「活発に選挙活動を展開し、自民党候補を選挙区で落選させた」(元教員)とされる。
また、長年にわたって国政選挙など重要な選挙がある年には、選挙資金としてボーナス時に校長3万円、教頭2万円、一般教員1万円、OB教員5000円の半強制カンパが行われ、数千万円単位のカネが使途不明のまま闇に消えていた。
例えば山梨県教組の政治団体「県民主教育政治連盟」の政治資金収支報告書は当初、平成11〜15年の寄付金額をゼロと記載していた。ところが、産経新聞がこの不透明な資金の流れを報じると15年の報告書の寄付金額を1021万円と修正し、輿石氏の選挙があった16年には5142万円を計上したのである。