自衛官が初めて海外での公式なパーティーなどに出席すると、非常に戸惑うことがある。
「今日は礼装なのに、貴殿はなぜ勲章をつけないのか?」
普通の国では、軍人がその功績に応じた勲章を国から授与されて礼装を飾っているが、自衛隊にはこれがない。防衛省が独自に作っている防衛功労章や、その略章にあたる記念章があるだけだ。
「服装違反」にもなり、他国の軍人に指摘されたという話はかねてより聞く。公式なパーティーに出席するような士官が、「これまで一度も勲章を受けていないのか?」と訝しがられるのだという。
また、退官後のことになるが、自衛官の叙勲については安倍政権になって、初めて統幕議長経験者が瑞宝大綬章を受章した。これまでは1ランク下の瑞宝重光章だった。首相の指示でランクアップしたことはあまり知られていないが、大きな前進といえる(=ちなみに、東京大空襲の指揮を執ったカーチス・ルメイ大将はじめ、米軍司令官には旭日大綬章が与えられている)。
自衛官の叙勲全般を見れば依然として不十分な状況は続いている。
55歳前後で定年を迎える若年定年制の自衛隊は、叙勲の対象となる通算在職年数が60歳まで勤務する他の公務員に比べて短い。在職年数が関係するとされる叙勲は相対的に低い等級に位置付けられ、また対象者の数も同じように危険と対峙(たいじ)する警察や消防などと比べても抑制的となっているようだ。