【藪から棒球】“ポスト掛布”阪神・矢野2軍監督への期待と不安 フロント主導のファーム選手起用&育成でカギは…

金本(右)と矢野の名コンビは来季、1軍と2軍に分かれる

 セ・リーグ2位でシーズンを終え、クライマックスシリーズ(CS)は無念のファーストステージ敗退となった金本阪神。23日に発表された来季コーチ陣で、注目は“ポスト掛布”として2軍監督に就任した矢野燿大氏(48)です。

 1軍作戦兼バッテリーコーチとして2年間、金本野球に携わってきた男だけに、1、2軍の意思疎通は問題ないと思いますが、気になるのはいきなりファームを指揮する立場に就いた点です。

 私は2011年から3年間阪神で投手コーチを務めましたが、そのうち2年間(11年、13年)はファーム担当。そこでは選手起用や育成が現場ではなく「フロント主導」で行われていました。

 当時、現場とフロントの双方が意見を持ち寄ると、通る割合は1:9くらいだったと思います。勝利最優先の1軍ではそんな光景は見られませんが、私は当時この特殊な環境に苦労しました。選手も口にこそ出しませんが、「どっちを信じればいいのか?」と結構様子をうかがっています。それでも指導経験豊富な人材がいれば、うまく聞き流したり、バランスを取って軌道修正をしながらチームを運営できると思います。

 ところが今回、2軍の指導者の顔ぶれを見ると、30-40代ばかりで一気に若返った半面、年配のスタッフは皆無。こうした問題に真正面から対峙し調整するのは、矢野2軍監督の役目です。

 今季限りでユニホームを脱いだ前2軍監督の掛布雅之氏(62)、前2軍野手チーフ兼育成コーチの古屋英夫氏(62)、前2軍投手コーチの久保康生氏(59)らも悩みながら、ある種うまく聞き流して対処してきたと思いますが、現場主義の矢野2軍監督は果たしてうまく立ち回れるのか。1軍とまったく違う光景に面食らわないか、心配でなりません。

 1軍で通用する若虎を鍛錬させて送り出し、同時に年下の指導者を育成することも課せられていますが、鍵は久保前コーチから知恵を授かった高橋建、育成コーチから昇格した福原忍の両2軍投手コーチがどこまでサポートできるか。注目していきたいと思います。

 ■藪恵壹(やぶ・けいいち) 1968年9月28日生まれ、三重県出身。和歌山・新宮高校から東京経済大、朝日生命を経て93年ドラフトで1位指名され阪神入り。94年に新人王を獲得。エースとして2003年のリーグ優勝に貢献。05年にアスレチックスへ移籍、ロッキーズ、ジャイアンツなどでプレー。10年7月に楽天入り、同年限りで現役引退。11-13年は阪神投手コーチ。現在は野球評論家。