決め手は?大谷、メジャー挑戦“代理人選定暗闘”全容 “先輩”菊池まで巻き込み…所属ホリプロではなく吉本が仲介

大谷は公然とメジャーへ向けて動き始めた

 いよいよ夢への一歩を踏み出した。日本ハムの二刀流、大谷翔平投手(23)が7日、初めて自ら今オフの米大リーグ挑戦を明言。米国での代理人は、米大手事務所「CAAスポーツ」のネズ・バレロ氏に任せることも判明した。日本球界の至宝が自らの進路を、敏腕代理人に託すに至った決め手は何だったのか。実は元大リーガーの球界OBをキーマンとして、花巻東高の先輩の西武・菊池雄星投手(26)まで巻き込み、マネジメント契約を巡る暗闘が繰り広げられていた。

 「自分が向こう(メジャー)に行くために必ず必要なものなので、このタイミングで(代理人を)決めたという感じですね。メジャーに前進? そうですね。そのためにやりたいと思っています」

 千葉県鎌ケ谷市の2軍施設で、手術した右足首のリハビリを順調にこなすと、大リーグ挑戦をはっきりと口にした。

 バレロ氏については、「自分が向こうに行く上で、一緒に頑張りたいなと思えると言うか、選ぶとしたら1つしか選べない。決め手はそこじゃないかと思う」と信頼感を語った。

 バレロ氏の顧客には大物がズラリ。日本人大リーガーでは青木宣親外野手(35)=メッツFA=やマーリンズの田沢純一投手(31)。他にもオリオールズのアダム・ジョーンズ外野手(32)、ブルワーズのライアン・ブラウン外野手(33)らを抱える凄腕だ。バレロ氏は、米経済誌フォーブスで「最も価値あるスポーツエージェント」にも選ばれている。

 大リーグでの二刀流が期待される大谷は、米国でも大きな注目を集めており、顧客として契約を希望する有名代理人も多かった。大谷は弁護士を立てて慎重に代理人選びを進め、豪腕と呼ばれる「スコット・ボラス・コーポレーション」、ダルビッシュ(ドジャースからFA)、前田(ドジャース)らを抱える「ワッサーマン・メディア・グループ」、イチロー(マーリンズからFA)と契約しているジョン・ボッグス氏らの中から、最終的にCAAを選んだ。

 その代理人契約の経緯は一筋縄ではいかない部分もあった。

 一部の米メディアは、来オフ以降のメジャー移籍を目指す高校の先輩、菊池もまたバレロ氏と代理人契約を結んだと同時に報じている。大谷と菊池の示し合わせたかのような動きに、ある芸能関係者は首をひねっている。

 「現在の芸能事務所はスポーツ選手のマネジメントにも力を入れるようになっており、菊池選手も大谷選手もホリプロとマネジメント契約を結んでいたはず。それがなぜ、吉本(興業)と関係が深い代理人事務所と契約したのか。同じ高校出身の2人の代理人が同時に明らかになったということは、やはり母校が関係しているのではないか」

 クローズアップされるのが2人の恩師、花巻東高野球部の佐々木洋監督(42)だ。2人は監督に心酔しており、2010年末の菊池に続いて16年末に大谷がホリプロと契約した際も、強い関係性が取り沙汰された。

 ところがここにきて一転、大谷と菊池のメジャー移籍はホリプロではなく、吉本を介したルートをたどることになった。

 吉本といえばお笑いのイメージが強い大手芸能事務所だが、大リーグ選手のマネジメントも得意としており、2009年からCAAと包括提携関係を結んでいる。大リーグでプレーした斎藤隆、石井一久の各投手らプロ野球OBが多数在籍している。

 実はその中の1人の元選手が水面下で、菊池を巡ってトラブルを起こしたこともあるという。

 昨オフから何度も会食などの形で菊池に接触。タンパリングを危惧した西武の球団幹部が出入り禁止を申し渡したが、大谷にもメディア関係者を通じて触手を伸ばしていたといわれる。

 大谷と菊池が所属するホリプロは、13年末に田中将大投手(現ヤンキース)と結んでいたマネジメントを解消されている。田中側は独自にエクセル・スポーツ・マネジメント社のケーシー・クロース氏と代理人契約。大物をさらわれた。現役メジャー選手のマネジメント実績がほぼないことが、花巻東コンビには物足りなく映ったのか。

 ようやく代理人が決まったが、まだ大谷の大リーグ挑戦には大きな関門がある。AP通信は8日、日本野球機構(NPB)と大リーグ機構(MLB)が行っているポスティングシステムの改定交渉が大筋で合意に達し、今オフは現行ルールを継続し、来オフから新制度を採用すると伝えた。しかし、まだMLB選手会の同意、オーナー会議での了承が必要だ。CAAはこの問題を乗り越える上でも一定の役割を果たすことができると米国では報じられている。

 ニューヨーク・ポスト紙は「なぜ、CAAは大谷のメジャー挑戦の橋渡しとなるのか。それは、こうした交渉にたけたCAAなら、大谷の希望を聞き、これを大リーグ選手会に伝えて、大谷の契約と新しいポスティング・システムの構築を一気に進めることができるのではないかと期待されているからだ」と解説している。

 一方で、米専門局ESPNは「大谷だけ特例とすることに選手会が強く抵抗している。予断は許さない」とも伝えている。

 大谷は「まだポスティングにもかかっていない。自分の気持ちだけであって、決定事項ではない」。バレロ氏は選手、球団と密着しての交渉を得意としており、その手腕が大谷の米国での活躍の鍵を握っているのは間違いない。

 ■CAAスポーツ「クリエーティブ・アーティスツ・エージェンシー」。1975年に米カリフォルニア州で設立された世界最大級の芸能事務所で、顧客にトム・クルーズ、ブラッド・ピット、キャメロン・ディアス、レディー・ガガら大物俳優、歌手がズラリ。スポーツ部門は2006年に創設された。54歳のバレロ代表は、ペパーダイン大卒で85年ドラフト4巡目でマリナーズに入団した元遊撃手。2A止まりで代理人へ。08年にブラウン(ブルワーズ)の5年総額1億500万ドル(約120億円)の契約などを成立させた。NBAやNFLのほか、サッカーのC・ロナウド(Rマドリード)も所属している。