メジャー、監督の若返り進むワケ 「単なる中間管理職」に変化、大谷の二刀流にも影響か

世界一の座に就いたヒンチ監督はコミュニケーション能力にたけている(AP)

 2018年、メジャーリーグは40代前半でイチロー外野手(44)と同い年か若い監督が7人も現場で指揮を執る。メジャーのフロントが描く「監督像」が「現場の最高責任者」から「単なる中間管理職」へと激変してきたことと関係がありそうだ。

 かつてメジャーの監督になるには数年間マイナーで指揮を執り、メジャーのコーチを経るのが普通だった。

 ところがレッドソックスの監督になったアレックス・コーラ(42)は今季世界一になったアストロズのベンチコーチからの昇格だが、引退後は主にESPNで解説。コーチ経験はわずかに1年だった。ヤンキースの指揮を執るアーロン・ブーン(44)に至っては、引退後コーチ経験さえない。

 なぜこんなことになったのか。

 たとえばレッズ、タイガースを指揮したスパーキー・アンダーソンは監督室で葉巻をくゆらし、選手には近寄りがたい雰囲気があり、現場のすべてを支配した。

 ところが、近年、野球を科学するセイバーメトリクスに精通したGMたちは、あらゆるデータをアナリストに分析させ、戦術、先発を決めて現場の監督に通達するようになった。監督の仕事はこれらフロントの意向を選手に伝え、気持ちよくプレーさせることに変わってきたというのだ。

 ワシントン・ポスト紙は「これでは監督は『クラブハウスの管理人』、あるいは『中間管理職』だ」とした。

 多くのベテラン監督はこれを嫌ったが、アストロズのAJヒンチ監督(43)の成功がこれに拍車をかけた。スタンフォード大学で心理学を専攻。2009年ダイヤモンドバックスの監督に35歳で抜擢されたときは「経験不足だ」と非難と批判の嵐だったが、2015年アストロズの監督を引き受けると世界一に駆け上がった。

 若手とスムーズにコミュニケーションをとれ、フロントとの連絡を密にし、最新のデータ野球を受け入れる監督が今やフロントにとって理想。それには「若手に限る」となってきたのだ。

 オールドスクールの監督を自認。選手とコミュニケーションをとれなかったヤンキースのジラルディ監督(53)が続投できなかったのもこれが理由だ。

 インディアンスのテリー・フランコナ監督(58)はコーラとレイズのケビン・キャッシュ(41)の師匠である。フランコナ自身はマイナーの監督を5年、タイガースの三塁コーチを1年経験したあとメジャーの監督になったが、「ショートカット(近道)だからいい監督になれないということではない」と言い切る。

 ヤンキースのキャッシュマンGMはブーン監督について、「監督経験は特に必要ない。試合を指揮する中でおいおい覚えていけばいい」とさえいい切った。

 カブスのジョー・マドン監督(63)のように相手の意表をつく名采配を振るえる監督は年々、少なくなるだろう。

 そんな中、大谷翔平(23)を獲得したエンゼルスのマイク・ソーシア監督(59)は来季19年目を迎える。知将とされ大谷の二刀流に積極的な姿勢をみせた。だが近年は気むずかしく、フロントとも対立。独裁が長すぎる、との批判も出始めている。大谷の二刀流をどこまで辛抱するのか一抹の不安が残る。

 ちなみに、18年のメジャー30球団の監督は40代10人、50代11人、60代9人。監督歴で長いのは順に(1)ボーチー(ジャイアンツ23年)(2)ショーウォルター(オリオールズ19年)(3)ソーシア(エンゼルス、18年)(4)フランコーナ(インディアンス17年)の順だ。