貴乃花親方に前例なき処分、加害者側と同等に協会「矛盾ない」 報告書で浮かび上がった言動の“理由”

日本相撲協会の臨時理事会後、会見に臨む危機管理委員会の高野利雄委員長。左は八角理事長=28日、東京・両国国技館(斎藤浩一撮影)

 大相撲の元横綱日馬富士関(33)による暴行事件をめぐり、被害者である貴ノ岩関(27)の師匠、貴乃花親方(45)=元横綱=に対し、日本相撲協会は28日、初の理事解任処分を決議した。同日に公表された貴乃花親方の責任を指摘した報告書では、「別の部屋の力士だったら報告したかも」など初めて親方本人の弁明内容が明らかにされ、これまでうかがい知れなかった言動の“理由”が浮かび上がった。一方、鳥取区検は同日、元日馬富士関を鳥取簡裁に略式起訴した。

 報告書によると、貴乃花親方は10月26日、負傷した貴ノ岩関を見て事件発生を把握。当初は「『酔っ払って転んだ』旨の説明を受けたが、傷の状況から事件性が疑われ、一般人を巻き込んでいる可能性もあるため、警察に相談した方がよい」と考え、3日後の同29日に警察に被害届を出したという。

 この対応に対し、同協会危機管理委員会の高野利雄委員長は「深刻な緊急事態の発生を認識した以上、協会に第一報をすべきだった」と指摘した。

 また、被害届を出すまでの間について貴乃花親方は、「私に話せない事情があるのではないか。親方としては弟子の言うことは信じてやらなければならない」と考え、事件の詳細を把握できなかったと説明。協会に対しては、「別の部屋の力士だったら報告したかもしれないが、自分の弟子のことだから調べようと思った」「事態の把握をしなければ協会には報告のしようがなかった」と明かした。

 高野氏はこうした点については「師匠が弟子に事情を問いただせないという関係は本来あり得ない」と指摘。「結局、何らの事情も把握できないまま事態を放置した」とし、問題の長期化、深刻化の大きな原因になったとした。

 このように貴乃花親方は報告する意思自体は持っていたことを明かした一方、「警察に報告を依頼した」ことを理由に「報告義務は解除された」とする矛盾した主張もしていた。実際に、警察から協会へ伝わったのは後日だったことから、高野氏は「極めて異常な事態」「到底納得のいく説明とは言えない」と非難した。

 その後、貴乃花親方は今月18日まで「捜査が終了した段階で聴取に応じる」などと、危機管理委の貴ノ岩関に対する聴取協力要請を拒否し続けた。

 同様に自身への聴取要請も拒んだのは、「弟子である貴ノ岩と一体だと考えているので、2人一緒に協力すればよい」と考えたためという。危機管理委から「示談を勧められることを危惧したのか」と聞かれた際には、「そういうことは考えていなかった」と回答した。

 理事会が導き出した貴乃花親方に対する処分の結論は、2階級降格による理事解任。結果的に、理事を辞任して役員待遇委員に降格した「加害者側」の元日馬富士関の師匠、伊勢ケ浜親方=元横綱=と同じ処遇となった。

 28日の協会の記者会見では、報道陣から整合性を問う声が上がったが、高野氏は「私たちが判断したのは貴乃花親方が理事、巡業部長として職務に従って仕事をしていたかどうかで、(親方は)誠実に職務をしていなかった」と指摘した。その上で「伊勢ケ浜親方は自ら責任を感じて(理事を)辞任した。いきさつや認定事実が違うので、矛盾はない」と述べた。

 ■親方は適正な動き

 早稲田大スポーツ科学学術院の武藤泰明教授(スポーツマネジメント)の話「今回は貴ノ岩関という明らかな『被害者』が存在する問題であり、貴乃花親方が警察に被害届を提出し、判断を仰ごうとしたのは法律にのっとった適正な動きといえる。にもかかわらず、日本相撲協会は今回、組織のやり方に反したことなどから理事解任という判断に動いた。まずは警察や司法に委ねる姿勢を取ることこそが、あるべき姿ではなかったか。適正な手順で動いた貴乃花親方を処分することはおかしい」