【川崎フロンターレ・憲剛の言葉】「人間って、泣くと動けなくなるんですね」 “シルバーコレクター”がついにつかんだ栄冠

優勝が決まると、中村は泣き崩れ、動けなくなった

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 胸のつかえが取れた。タイトルを手にした時に言おうと長く封印してきた言葉を、川崎フロンターレの大黒柱・中村憲剛(37)はついに口にした。

 「これで一歩先に進めると、やっと言えるね。これだけ長くいるのは僕だけなのに、今回も2位だったら理由は自分にある、現役の間はもうタイトルを取れないのではと思う部分も多少あった。これでいろいろな呪縛から解放されそうな気がする。本当に感無量です」

 昨年12月2日のJ1最終節。首位の鹿島アントラーズに勝ち点2差の2位でこの日を迎えた川崎は、大宮アルディージャを5-0で一蹴。人事を尽くした先に、鹿島が引き分けるという天命が届いた。

 2009年の最終節もまったく同じ状況だった。このときは柏レイソルに勝ったものの、首位の鹿島も勝ったことが目の前の光景で分かった。

 「柏に勝ってベンチを見ると、誰も喜んでいなかった。今日はみんながそわそわしていたので、この後に何が待つのか、と考えたら残り数分で半泣き状態で、気がついたらピッチに突っ伏していた。人間って泣くと動けなくなるんですね。今までのことが走馬灯のように頭の中に流れていた」

 準優勝に甘んじること実に7度。いつしか“シルバーコレクター”と揶揄されていた。中央大学から入団して15年目。攻撃力の川崎という文化を築いた軌跡に自信は持っていても、確信は抱けなかった。

 「勝てていないよね、といわれたら何も言い返せなかった。タイトルを取れたから言えますけど、これで優勝できなかったらもう難しいのではと思うこともあった」

 ロイヤルボックスに上がって初めて、最多の19個のタイトルを獲得している鹿島の強さの理由が分かった。

 「僕が15年間も探し続けていたのは、この光景だったんだなと。優勝したチームは、自分たちが積み重ねた努力への対価となるこの景色を、また見たいと思う。人間なので欲が出るというか、一回の優勝だけじゃ物足りないと思っているので」

 至福の喜びに浸り続けたいと願ったが、もちろんかなわない。追われる側へと立場を変えた新たな戦いが間もなく始まる。

 一時は2ケタを超えたケガ人が徐々に復帰し、新加入組もフィットしてきた昨年5月。中村からこんな言葉を聞いた。

 「これで何が起こるかといえば競争なんです」

 主力が全員残留し、FW大久保嘉人(前FC東京)やMF斎藤学(前横浜F・マリノス)らが加入した今年は、チーム力を引き上げる競争がさらに激化する。日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督が「川崎の○歳」とその時々の年齢を添えて注目してきた“レジェンド”は、全タイトル独占を目指す川崎の中心でいぶし銀の輝きを放ち続ける。(スポーツライター・藤江直人)=終わり

 ■中村憲剛(なかむら・けんご) 1980年10月31日生まれ。東京都小平市出身。都立久留米高、中大をへて、テスト生の立場から2003年に川崎フロンターレ入団。以降同クラブひと筋。06年日本代表初選出。16年に史上最年長の36歳でJリーグMVP。17年にはクラブ初のJ1優勝に貢献。