【実録 槙野智章】ワクワクするハリル監督の“ダメ出し”DVD 「厳しさが僕を成長させてくれる」

槙野はハリルホジッチ監督の下で日本代表のセンターバックに定着した

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 DF槙野智章(30)は、日本代表チームからDVDが郵送されてくる度に心を震わせてきた。浦和でのプレーが収められた映像に、ハリルホジッチ監督による「ダメ出し」が添えられている。

 W杯ロシア大会を決めた直後の昨年10月から、槙野は日本代表のセンターバックに定着。ハリルホジッチ監督には厳しいゲキを浴びせかけられ、それに食らいついてきた。

 「代表合宿でも『ここを直せ』と何度言われたことか。30歳なのに褒められない立場ではありますけど、それでも代表に呼んでくれて、怒ってくれるのは、僕のことを常に見てくれているから。監督の厳しさが僕を成長させてくれるし、僕自身を『もっと変わらなきゃいけない』という気持ちにさせてくれる」

 DVDを送りつけられるのは槙野だけではない。各選手が指揮官から、ときとして辛辣(しんらつ)な指摘を受けている。槙野は逃げることなく、向上心を持ってDVDを通してハリルホジッチ監督と格闘してきた。

 「時間をかけてDVDを作ってくれるということは、映像を編集するためにさらに時間をかけて試合を見てくれているということ。日本代表にとって僕は必要なんだ、というメッセージの裏返しだと感じるからこそ、感謝の気持ちをプレーで返さなきゃいけない」

 ハリルホジッチ監督の初陣となった2015年3月から、故障時を除いて槙野は招集され続けてきた。当時からポテンシャルを高く評価されていたのだろう。監督は、国内組だけが招集された同年5月の代表候補合宿の前にこう語った。

 「槙野に何を言うのかは、もう考えてある」

 これも槙野に対する期待を表した言葉だが、期待はされていても、出場機会がなかなかもらえない。センターバックではなく、左サイドバックの控えとして招集されるケースも少なくなかった。W杯アジア最終予選は1試合の出場に終わった。

 「常にベンチで試合を見ていて、非常に悔しさがあった。チャンスを得たときには、とにかく結果を出してポジション争いの中に割り込んでいくんだと、何度も言い聞かせてきました」

 どちらのポジションで勝負したいのかを槙野に聞いたことがある。即座に帰ってきた答えはセンターバックだった。

 「自分の一番の強みというか、今の代表のシステムではまるのであれば、真ん中ですね。いろいろなポジションができる、というだけでは生き残っていけない。一つのポジションに対する強みを、試合に出たときに発揮できるようにしないと」

 代表での積み重ねと、決して順風満帆ではない浦和で味わった悔しさと危機感。それらが昨年、化学反応を起こしたかのように、槙野のプレーは変わった。機が熟したとハリルホジッチ監督も判断したのか、昨年10月から槙野は代表のセンターバックに定着した。

 「W杯は夢ですけど、夢のままで終わらせたくない。最後のチャンスだと思っているので、日の丸を背負う覚悟と責任をより強くもちたい」

 まだ見ぬ大舞台へ。ロシアへの決意も新たに迎えた今年は、重大発表で幕を開けた。(スポーツライター・藤江直人)=つづく

 ■槙野智章(まきの・ともあき) 1987年5月11日生まれ。広島市出身。2000年に13歳でサンフレッチェ広島ジュニアユースに入団し、3年目にセンターバックに定着。03年にユースチーム、06年にトップチームに昇格。09年に日本代表初招集。10年末にドイツのFCケルンに移籍。12年に広島時代の恩師ペトロビッチ氏が監督に就任した浦和へ移籍。18年1月20日、女優の高梨臨と入籍する予定であることを発表。