【小林至教授のスポーツ経営学講義】プロ野球、日本で外国人選手の値段が高騰するしくみ 誰にも計れない適応力

中日の新外国人ジーはメジャー通算51勝の実績を誇るが、日本に適応できるかどうかは未知数

 春季キャンプ前半の話題の中心は新戦力、とりわけ新外国人に大きな注目が集まる。柵越えの数や身のこなし、性格まで事細かに報じられる。

 実際のところは、開幕の2カ月も前のこの時期に、柵越えが何本出ようが、スピードガンがどんな数字を示そうが、ほとんど意味はない。それはわかっているけど、マスコミも評論家も、そして当事者の球団および現場も、ついついその一挙手一投足に注目してしまうのは、外国人選手の成否がその年のチームの浮沈を大きく左右するのと、それほど重要なのに、いまだに当たりハズレは公式戦でプレーしてみないと分からないからだ。

 日本に来る外国人は、掘り出し物狙い、ダメ元で手当たり次第というケースも中にはあるが、そこで当たる確率はホントに低い。やっぱり尺度として、ある程度の実績は必要だ。

 具体的には、米大リーグではポジションや年齢の関係でレギュラー定着とはいかないものの、AAAではずぬけた、業界用語でAAAA(クワドロプル・エー)と呼ばれる選手が対象となる。そうした選手は限られていて、まあ、候補リストは各球団それほど変わらない。たとえば、ヤクルトがバレンティンを獲得した当時、おそらく全12球団がリスト上位に挙げていたはずだ。こうした限られた選手を、各球団がそれぞれの指標を元にあらゆる角度からスカウティングをして吟味する。

 それでもやっぱり分からないのが、異なる環境への適応力である。

 日本で成功する選手はほぼ例外なく、米国でやっていた頃とプレースタイルを変えている。日本は大リーグに比べて球団数が少なく、同じ相手と何度も対戦することになるため、中心選手ともなると徹底的に研究されるが、裏を返せば、相手の研究を重ねれば自分なりの法則を発見できるということでもある。

 そういう適応力があるのかないのかは、米国でプレーしているときには、たとえ何度も会話を交わしても、やはり未知数なのだ。

 また、我慢して使い続けることも成功のための重要な要素だ。これまた、許容範囲はチーム事情によるし、我慢し続けて心中となるリスクも当然ある。毎年優勝争いを求められる(あるいは注目度が高い)球団で、外国人がなかなか当たらないのはそれが大きな要因である。

 ならば外国人に頼らないチーム作りをすればいいと言っても、やはり打者でいえば飛距離、投手でいえば球速や球質など、日本人にないものを持つ彼らのチカラは捨てがたい。結果、ある程度の確率を求めるのであれば、既に日本で実績のある選手か、異文化への適応力の証左ともいえる韓国で実績を残した選手ということになり、対象選手のリストはさらに狭くなるから、お値段は非常に高くなるわけだ。

 ■小林至(こばやし・いたる) 1968年1月30日生まれ。東大から1991年ドラフト8位で千葉ロッテに指名され入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となったが、1軍登板なく93年退団。その後、米コロンビア大で経営学修士号取得。02年から江戸川大学助教授。05年から14年までソフトバンク球団取締役を兼任。現在、江戸川大学教授、専門はスポーツ経営学。