伊調馨、リオ選考でも冷遇されていた 内閣府は関係者聴取の意向、国を巻き込んだ騒動に

リオ五輪で前人未到の4連覇を達成した伊調。この笑顔の裏に壮絶パワハラがあったとは…

 女子レスリング五輪4連覇の伊調馨(33)=ALSOK=が、日本レスリング協会の栄和人強化本部長(57)からパワハラを受けたとする告発状が内閣府に送付された問題で、2016年リオデジャネイロ五輪の選考でも伊調が“冷遇”されていたとレスリング関係者が証言した。協会側は告発状の内容を否定、伊調は告発状に関与していないとしたが、パワハラについては否定しなかった。内閣府が関係者聴取の意向を示すなど、国を巻き込んだ騒動に発展しそうだ。

 関係者が問題視しているのは、リオ五輪女子レスリング代表の選考過程だ。

 五輪前年の15年9月の世界選手権で優勝した48キロ級の登坂絵莉(24)、53キロ級の吉田沙保里(35)と58キロ級の伊調は、栄氏が定めた規定に従い、同12月の天皇杯に出場しさえすれば五輪内定とされた。

 この天皇杯で、栄門下の登坂は53キロ級、吉田は55キロ級と1つ上の階級で出場した。つまり栄氏による規定は、「五輪で実際に出場する階級でなくても大会に出さえすればOK」という不可思議なもので、2人は減量苦を免れたのだ。

 これに対し伊調は、しっかり調整して本来の58キロ級に出場した。規定の詳細を伝えられていなかったとされ、「田南部力(たなべ・ちから)コーチ(42)ともども怒り心頭だった」と関係者は明かす。

 内閣府の公益認定等委員会に送付された告発状をめぐってさまざまな文書も飛び交った。

 日本レスリング協会は1日、《伊調選手の練習環境を不当に妨げ、制限した事実はない》《田南部力コーチに対し、伊調選手への指導をしないよう不当な圧力をかけた事実もない》など、告発状に記載されたパワハラ疑惑を否定する文書を出した。

 文書では田南部コーチに男子の育成・強化がおろそかにならないよう注意喚起したことや、伊調が男子合宿に参加する場合は、男子選手の全体練習の終了後に指導を受けるよう伝えたことは認めており、これらは「不当」ではないということのようだ。

 伊調は同日、ALSOK広報部を通じたコメントで、告発状への関与を否定した。一方でパワハラについては否定せず、内閣府などの聴取には応じる意向を示した。

 伊調が国民栄誉賞を受賞していることもあってか、政府は今回の問題に敏感に反応した。菅義偉官房長官は同日の記者会見で、「必要があれば(内閣府公益認定等)委員会で適切に対応する」と言及した。日本レスリング協会が公益増進を目的とした公益財団法人であることを踏まえ「同法人は、適切なガバナンス(組織統治)の下で事業運営が行われる必要がある」とクギを刺す。

 内閣府の公益認定等委員会は、協会に事実を確認する意向を示している。担当者は、まずは協会に「意見聴取するなどして事実関係の把握を行う」と述べた。

 政府が実態解明に動き出すなか、1984年ロス五輪に日本代表として出場、プロレスラーから政界に転じ、レスリング協会副会長を務める馳浩・元文部科学相(56)はこう弁明した。

 「レスリング協会の福田(富昭)会長と高田(裕司)専務理事が事実関係も含めて一元化して対応している。伊調さんにしろ、田南部さんにしろ思ったことがあるなら福田会長や高田専務理事や幹部と膝を突き合わせて話せばいいだけだ。誰がどういう目的でこういう告発の文書を内閣府に出したのか分からない」

 栄氏がレスリング部監督、吉田が副学長を務める至学館大学学長でレスリング協会副会長でもある谷岡郁子元参院議員(63)はツイッターで、「陰湿なパワハラ体質が中心にあって、沙保里はじめこれだけの強くも明るく、爽やかなチャンピオンたちが育つと思いますか? 栄監督の指揮の下、高校生、大学生でこの9年余、退部者は1人もいません。事実が人間性の証明」と栄氏を擁護するツイートを連投した。これを吉田が一時、リツイート(拡散)したが、その後削除された。