栄強化本部長vs田南部コーチの確執、娘をめぐる“怨念”も 伊調パワハラ騒動

伊調(写真)のパワハラ騒動の裏に、栄強化本部長と田南部コーチの確執が見え隠れする 

 女子レスリングで五輪4連覇した伊調馨(33)=ALSOK=が、日本レスリング協会の栄和人強化本部長(57)からパワハラを受けたとする告発状が内閣府に送られた問題で、協会は6日、倫理委員会を非公開で開いた。騒動の背景には、女子の指導で実績を残した栄氏と、男子の指導で評判が高い田南部力(たなべ・ちから)コーチ(42)の確執も浮かぶ。

 日本協会は、倫理委員会を非公開で行う理由を「どういう状況なのかまだ分からない。まずは状況を確認したい」と説明した。これに対し、告発状を送った貞友義典弁護士は、「ヒアリングは公正中立な第三者機関が行うべきだ」と主張している。

 パワハラ騒動を複雑にしているのが、レスリング界に存在する「男女問題」だ。栄氏は女子レスリングで6人の金メダリストを育て、吉田沙保里(35)の国民栄誉賞受賞などの功績により、男子を含めた強化本部長に就任、協会内で男女の枠を超え実権を握るようになった。そんな栄氏に複雑な感情を抱く男子側の指導者もいるという。

 世界のレスリング人口は約100万人とされるが、女子はこのうち約1万人で選手層が格段に薄い。日本の男子は重量級の強豪ぞろいのイスラム教圏の選手に苦戦することが多いが、女子では宗教上の理由で競技人口が極めて少ないことも、日本にとっては大きなアドバンテージになる。

 「女子の指導者よりも男子の指導者の方が優秀というのがレスリング界の常識だが、世間では単にメダルの数を比較して男子の方が苦戦している印象を持たれがちだ」とレスリング関係者は明かす。

 協会は伊調を指導していた田南部コーチに「男子フリースタイルチームの育成・強化が疎かになることのないよう注意喚起したことはある」と文書で認めたが、田南部氏はリオ五輪で一定の結果を残している。

 男子フリースタイル57キロ級で樋口黎(れい、22)は、田南部コーチ直伝の足関節を固めてローリングするアンクルホールド、通称「田南部スペシャル」を武器に銀メダルを手にした。

 田南部コーチが女子の指導に出向いた際には、女子選手が今まで見たことのない技術の数々に驚き、「これからも教えてほしい」との声が出たとされる。

 ただ、2年後の東京五輪でも、金メダル候補の大多数が栄氏が監督を務める至学館大レスリング部所属というのが現実だ。「仮に栄氏が今回の問題で下野した場合、誰が面倒を見るのかという問題もある」(レスリング関係者)

 告発状では、田南部コーチ(告発状の中ではA氏)の実娘がインターハイで2位となったが、《栄理事の指示により、全日本に招聘されていない。そのインターハイで1位となった選手、及び3位となった2人の選手は全日本に呼ばれている》との記述もあった。

 これが事実であれば、相当な怨念が渦巻いていてもおかしくない。