告発の裏に「不満」レスリング協会長期政権と学閥 混迷の伊調パワハラ騒動

国民栄誉賞の受賞が決まり、記者会見に臨んだ伊調(左)と福田会長=2016年9月

 五輪4連覇の伊調馨(33)=ALSOK=が日本レスリング協会の栄和人強化本部長(57)からパワハラを受けたとされる問題は、週刊誌を巻き込んだ泥仕合の様相となってきた。背景には15年の長期政権となっている協会執行部への不満や、学閥間の権力闘争も浮かび上がる。

 8日発売の週刊文春は「告発第2弾」として伊調の姉で五輪銀メダリストの千春さん(36)が登場、「馨が文春さんの取材に答えた内容は事実です」と語り、パワハラを否定した栄氏に疑問を呈した。田南部力(たなべ・ちから)コーチ(42)とともに警視庁のレスリング部で練習できなくなったのも事実だと強調した。

 これに対し、同日発売の週刊新潮では栄氏が登場、告発された理由として「伊調の従兄弟(いとこ)だというあの男性に、私との確執が一因となって、謀られることになったのかもしれませんが…」と語っている。栄氏との間でイベントのギャラをめぐるトラブルが生じたことなど男性の行状も詳細に報道。総じて栄氏や協会側の言い分を中心に構成されていた。

 文春と新潮の書きぶりは、さながら伊調・田南部コーチと栄氏・協会の代理戦争のようになっているが、告発が単純なパワハラ問題でなくなっている裏に、協会執行部へのくすぶる不満があるとみるレスリング関係者もいる。

 協会の福田富昭会長(76)と高田裕司専務理事(64)は2003年4月に就任し、現在8期目を務める。

 福田氏は日本オリンピック委員会(JOC)でも副会長などを歴任、2020年東京五輪の招致や準備に携わるアマチュアスポーツ界の超大物だ。高田氏は1976年モントリオール五輪金メダリストで、日本がボイコットした80年モスクワ五輪でも金メダルが確実視されていた伝説的なレスラーとして知られる。

 元格闘家でジャーナリストの片岡亮氏は、「スポーツ界では先輩が役員を続けるというなら、後輩はそれに従う。大会で結果を出した優秀な選手や年功序列で地位も変わるものだ」と解説する。

 福田・高田体制が取り組んだのが2004年アテネ五輪で初採用された女子の強化で、責任者として栄氏に白羽の矢を立てた。栄氏は至学館大学を拠点に吉田沙保里(35)や伊調らを育て、16年リオ五輪まで金メダル11個を量産。15年2月からは男子の強化にも責任を持つようになった。

 栄氏ら新興の至学館勢と、田南部コーチら本流の日本体育大学勢のいさかいがパワハラ告発に発展したとの指摘もある。

 高田氏自身は日体大出身だが、栄氏について「東京五輪を控えているのに、彼を外せないというのは分かるでしょう。意図的なことがあるから、告発文を出している。協会を批判するためだ」と話す。

 練習場所がないという伊調が置き去りになっていないか気がかりだ。